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宇都宮徹壱ウェブマガジン

【無料記事】「プロサポーター」はなぜ炎上するのか? 旅するカメラ(2016年9月3日@バンコク)

「徹壱の日記」のような単なる日々の記録でなく、「今日の現場から」のような取材レポートでもなく、旅先で出会った人や出来事をさらりと紹介するコーナーがそろそろほしい。ということで、「旅するカメラ」という新コーナーを設けてみた。もちろん旅をしているのは私なのだが、カメラがあるからこそ私の旅は意味と広がりを持つ。だから「旅するカメラ」。今回のバンコク取材を契機に、いろいろ試行錯誤してみようと思う。

 そんなわけで、やってきましたタイの首都・バンコク。まずはサッカーファンにとって、ビビッドに「タイのイメージ」を感じさせる写真を載せてみた。岡崎慎司が所属するレスター・シティの胸スポンサー『KING POWER』はタイの免税店である。昨シーズン、プレミアリーグで優勝を果たしたレスターの選手たちが、タイを訪れて優勝報告をしたことでも話題になった。当然ながら、現地での岡崎の知名度も高い。

 今日は移動日と割り切っていたので、ホテルにチェックインしてから「現地組」のサポーターとタイ料理を楽しむこととなった。現地駐在の方の案内で訪れたのは、こちらのお店。味も雰囲気も申し分ない代わりに、お値段もそれなりであった。私自身、タイを訪れるのは6年ぶりであったが、富裕層向けのお店は明らかに多くなっている印象を受ける(もちろん屋台メシは今でもかなり安い)。

 さて、この席の主役は、この人。サッカー業界の「燃える男」村上アシシさんである。さっそく、直近の炎上話を披露して場を盛り上げる芸風は、さすがとしか言いようが無い。聞けばアシシさん、9月6日のタイ戦終了後、スタジアムの近くにあるタイレストランで、サポーター70人を集めての飲み会を企画したのだが、その参加費をめぐってFacebookのコミュニティ内で炎上したそうである。

 アシシさん曰く、もともとの会計方法は各テーブルで事後精算の予定だったが、当日の運営がうまく回るように参加費を事前に徴収するルールに変更。お店の予約に尽力してくれたタイ在住のサポーターへのお礼も含めて、ひとりあたりの参加費を1000バーツにする旨をコミュニティに書き込んだところ、「タイの物価を考えると高すぎる!」とクレームが殺到したそうだ。

 ちなみに現在のレートでは、1バーツはおよそ3円。「もともとの飲食費の見積もりはひとり500バーツ前後」とアシシさんが事前に書き込んでいた事情もあり、参加者の一部が1500円から3000円への値上げに反発した形だ。参加費がいきなり2倍に変更されたことに、クレームを入れたくなる心情もわからないではない。また、最初に「食費だけだと500バーツ」と内訳を公開したアシシさん側にも、少なからずの甘さはあったことも事実である。

 しかし、それを踏まえて私は思うのである。異国の地で70人規模のイベントを開催するために、現地在住の知人の協力を得てお店選びから席の予約まで対応し、当日の運営も行う「サービス」は、すでにボランティアで済まされる枠を超えている。ゆえに、それに見合った対価を求めることについては、さほど目くじらを立てる必要はないのではないか。

 そもそもアシシさんは「プロサポーター」という肩書となることを宣言している。つまり「プロとして、一定水準以上のサービスを提供する代わりに、対価は頂戴しますよ」ということだ。私が取材して原稿を発表し、その対価をいただくことと、基本的には何ら変わりはない。それでも炎上してしまうのは(ご本人の体質もあるだろうが)、「プロ」ではなく「サポーター」の部分に反発する人が多いからなのだと思う。つまり「サポーター=無私」のイメージが、ビジネスと相容れないと感じる人が一定数存在するからではないか。

 代表、クラブを問わず、有名サポーターの中には、これまで培ってきた人脈を生かしてビジネスを展開している例を、私は何人も知っている。そうした人たちが炎上しないのは、おそらく他者からの「見え方」に細心の注意を払ったり、ビジネスとサポーター活動が矛盾しないための整合性を設けたりしているからなのだと思う。それぞれに戦略や哲学があってのことなので、安易に善い・悪いと断じるつもりはない。ただ、「プロサポーター」という、これまで(少なくとも日本では)誰も名乗っていない肩書を自らに課し、まったく新しいサポーター像を創りだそうとしているアシシさんの心意気に対しては、微力ながら友人として応援したいと思っている。

 いずれにせよ、9月6日のバンコクでの戦いは、是が非でも勝ち点3を日本に持ち帰ることが最優先される。そのミッションが果たされたならば、誰もが500バーツの差額など気にすることなく、満面の笑みで盃を酌み交わすことだろう。ぜひ、そのような祝賀ムードになることを願って止まない。勝利の余韻に浸ること無く、すぐさま宴会の準備にとりかからければならないアシシさんは大変だろうが。

<この稿、了>

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