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【無料記事】U-20ワールドカップ盛り上げ隊が残したもの(徹マガバックナンバー) ちょんまげ隊長ツン&上野直彦インタビュー<2/2>

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■各会場でのホスピタリティは足りていたのか?

——盛り上げ隊の活動のひとつのピークが、スイスのシュベリー監督による感謝の言葉でした。スイスは結局、今大会は1勝もできず、しかも日本戦以外はスタンドがガラガラだったわけじゃないですか。それでも被災地の子供たちや日本サポーターとの交流があって、彼らは笑顔で日本を後にすることができたのは、本当に良かったと思います。

ツン 実は僕も心配していました。日本のすごく暑い時に、神戸とか広島といった会場で試合があって、スタンドをぱっと見上げたら、観客が1800人くらいしかいない。僕たちも日本戦以外の集客で努力してきたけれど、やっぱり限界はある。それで日本の印象が悪くなったら、どうしようかと。そうした中、スイスの監督のコメントは、リップサービスも含まれていたかもしれないけどホッとしましたね。

——こういう地味な大会だからこそ、ホスト国としてどれだけのホスピタリティを発揮できるかが問われますよね。

ツン 実は今回の運営には、言いたいことがあります。というのも、大会をスマートに運営するだけでない、プラスアルファの部分で、あまりにもホスピタリティが足りていなかったのではないかと思ったからです。たとえば駒場では、駅からスタジアムに行くまでの英語のプラカードがなかったり、あんなに交通の便が悪い宮城スタジアムでシャトルバスが出ていなかったり。

——いやほんと。仙台駅から、どうやって宮城スタジアムに行けばいいのかと。私が外国人だったら、かなり厳しかったですよ。

ツン そう。試合後のシャトルバスも出してなかったし。夜だったから、すぐに電車に乗らないと無理じゃないですか。そういうホスピタリティのなさは気になりました。しかも、仕切っているのはボランティアのスタッフではなくて、どこかの総合警備保障の人たちなんですよ。真面目なんだけど、真面目すぎて温かみが感じられない。そこは、ボランティアが活躍していたロンドン五輪との一番の違いでしたね。

——なるほど。ただ、02年のワールドカップの時は、ボランティアはかなり前から募集をかけていたし、スタッフ教育もある程度やっていました。だけど今大会は、準備期間が半年しかなくて、そうなると警備会社に丸投げするしかなかったんでしょうか。

ツン でもその人たちは、僕たちが一般のサポーターなのか、それともフーリガンなのか、認識ができないから結局抑えこむことになってしまう。一番びっくりしたのは、カテゴリー1の席で選手の家族が国旗を掲げていたら、それを下げさせましたからね。いや、国旗くらいいいだろうって。

上野 でも実は02年も、運営スタッフには融通が効かない人が多かったですよね。

——そこは日本の良い面と、悪い面が両方あって、確かに真面目にしっかり運営されているんだけど、融通が効かないというか、自分で判断ができる余地が少ないですよね。

上野 その裁量も無いし、与えられてもいないし。

ツン 宮城でメキシコのサポーターが10人くらい、ブブゼラを吹いたんですよ。そうしたら、すぐにスタッフが飛んできてダメだと。でも国立では、ナイジェリアはがっちゃんがっちゃん演奏していたじゃないですか(笑)。僕らも海外に行って、太鼓が持ち込めない時とかあったけど、その国の応援スタイルに対して、もうちょっとリスペクトする気持ちがあれば、問答無用で禁止、なんてことにはならないと思います。

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