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宇都宮徹壱ウェブマガジン

「今季の目標は『オシムさんを超えること』でした」 間瀬秀一(愛媛FC監督)インタビュー<1/2>

 今週は、2016年の最後を飾るにふさわしいゲストにご登場いただく。愛媛FCの監督に就任したばかりの間瀬秀一さん。間瀬さんといえば、イビチャ・オシム氏がジェフユナイテッド千葉の監督をしていたときの通訳として知られているが、その後は指導者に転身。14年にS級ライセンスを取得して、15年からJ3のブラウブリッツ秋田の監督に就任すると、2年目の今季は万年中位の秋田を4位にまで押し上げる快挙を成し遂げた(もっとも本人は「選手やスタッフのおかげ」と謙遜するだろうが)。

 実は今回のインタビューには、若干の曲折があった。最初に間瀬さんにインタビューしたのは、秋田を取材した10月3日のこと。その後、11月29日に間瀬さんの愛媛監督就任が発表され、インタビュー時から状況が一変したため、追加取材が必要となった。とはいえ、東京から秋田へは決して気楽に行ける距離ではない。幸い、12月上旬に千葉で行われるトライアウトに間瀬さんも参加することを知り、そこで二度目のインタビューをセッティングさせていただいた。よって本稿は、秋田と千葉で行われた2回の取材を再構成したものとなっている。

 いつになく、時間と手間がかかってしまった今回のインタビュー。しかしその分、間瀬秀一という指導者のユニークな経歴と哲学、さらにはその魅力的な人柄を浮き彫りにすることができたと自負する。そして図らずも、新しい指揮官を迎える愛媛のサポーターや2シーズンを共に戦ってきた秋田のサポーターだけでなく、千葉や岡山のサポーターにも楽しめる内容となっている。なお今回の取材に関しては、ブラウブリッツ秋田広報の須藤朋絵さんに大変お世話になった。この機会にあらためて御礼申し上げたい。(取材日:2016年10月3日@秋田、12月9日@千葉)

■愛媛からのオファーは「非常にやりがいを感じています」

――今日はよろしくお願いします。本題に入る前に、今回のトライアウトの印象について伺いたいと思います。いかがでしたか?

間瀬 自分も選手だったとき、海外5カ国でプレーする中でトライアウトを受けた経験もあるので、彼らの気持ちはよくわかるし、僕も彼らのひたむきさを真摯に受け止めていました。ただ、あまり固定観念は持ちたくなかったので、最初は渡されたデータは見ずにフラットな目でピッチを観ていました。(昨日の)午前・午後、(今日の)午前・午後と4回あった中で、ふっと惹かれるような選手はひとりずついましたね。

――なるほど。間瀬さんが現役時代にプレーしていたのは、アメリカ、メキシコ、グアテマラ、エルサルバドル、そしてクロアチアでした。実はそういった経歴って、あまり広くは知られていませんよね。

間瀬 そうなんですよ。オシムさんの通訳を経て指導者になったので、ありがたいことに「日本のモウリーニョ」みたいな言われ方をされますけど(笑)。でも僕は、2部とはいえプロとしてプレーヤーをやっていたし、通訳の仕事は僕のキャリアの中の通過点でしかない。それなのに日本では「オシムの元通訳」という肩書ばかりがクローズアップされる。じゃあ、グアテマラやエルサルバドルやクロアチアで助っ人としてプレーしていた選手の力量というものが、どのようなものか。実は(日本では)誰も知らないんですよね。

――いやあ、難しいでしょうね(笑)。

間瀬 実は僕、ジェフの通訳になりたての時に、1回だけミニゲームに入ったことがあるんです。当時のジェフは元日本代表もいました。で、たまたま人数が半端だったから、軽い気持ちでオシムさんは僕を入れたんです。そしたら僕、ハットトリックしましたから(笑)。「あれ、クロアチアの2部あがりでもけっこう通用するぞ」というのが、当時の正直な印象。それから二度とオシムさんは、僕を練習に入れることはなかったですね(笑)。

――なるほど(笑)。

間瀬 ただ、それは03年当時の話ですからね。今のJ1は、クロアチアの2部よりは全然レベルが高いと思います。たとえばトルコキャンプで、サンフレッチェ広島がディナモ・ザグレブと練習試合をやったら、けっこういい試合になっていましたから。

――海外プレーヤーから通訳、そして指導者へという間瀬さんキャリアについては、のちほどじっくりと伺いたいと思います。今季、J3のブラウブリッツ秋田を史上最高の4位にまで引き上げ、来季からJ2の愛媛FCを率いることになりました。まずはこの話題から入りましょうか。

間瀬 秋田が4位でフィニッシュしたことについては、ものすごくポジティブに捉えています。そしてこの2年、自分が秋田の環境で取り組んだことが、そのまま愛媛でも継続できると思っているので、非常にやりがいを感じていますね。というのも、J3での秋田とJ2での愛媛は(環境面で)かなり状況が似ているんじゃないかと。だからこその愛媛さんからのオファーだったと思っています。

――なるほど。その愛媛は木山隆之前監督が2年をかけて、素晴らしいチームを作ってきました。彼の遺産を引き継ぐことは考えていらっしゃいますか?

間瀬 そうですね。ただ、僕は「木山さんのチーム」というよりも、その前任の石丸清隆さん、さらに前任のバルバリッチさん、この3代の監督が積み上げてきた戦術だったりシステムだったりを重視したい。そこから継承できる部分は大いに活かしたいですね。

――では、ご自身に課せられたミッションは?

間瀬 選手の喜びと(試合を)見ている人の喜び。それを逆算して僕は指揮を執っています。そこの部分は前任者うんぬんというのは関係ない。愛媛FCというクラブに関わる、すべての人たちの喜びを大きくすることが僕のミッションであり、自分はそれができると思っています。だからこそ、今回のオファーをありがたく受けることにしました。

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