宇都宮徹壱ウェブマガジン

FIFAの「改悪」を憂慮する理由 ワールドカップ出場国増加で想定される7つの危惧

 齢(よわい)50を過ぎて最近よく感じるのが、「変化」や「改革」に対してネガティブな感情が先立つようになった、ということである。Jリーグに関して言えば、シーズン移行とか2ステージ制とかDAZN(ダ・ゾーン)とか──。理屈とは別のところで「それって改悪じゃない?」と思ってしまうのは、どこかで年齢に起因する部分があるのかもしれない。

 では、先ごろFIFAの総会で決定した、「ワールドカップ出場国48カ国」についてはどうか? これについても「改悪以外の何ものでもない」と個人的には考えている。ただし、自分が今30歳だったとしても、その気持ちに変わりはないだろう。「変えるのが面倒」といった年齢的な気分の問題ではなく、むしろ長年にわたってワールドカップという大会に憧れを抱き、4年に一度のフットボールの祭典を心底楽しんできたからこそ、私はそう考えるのである。

 その理由を述べる前に、まずは前提の部分をおさらいしておこう。出場国をこれまでの32カ国から1・5倍の48カ国に増加するのは、ジャンニ・インファンティーノFIFA会長の就任前からの公約のひとつであった。大会形式は、グループリーグを3チームずつ16のグループに分け、上位2チームずつ、合計32チームが決勝トーナメントを戦うというもの。全体の試合数は、これまでの64試合から80試合に増加するが、1チームの最大試合数は7と変わらないので、大会日数も現状維持できるという。

 ちなみに英紙『デイリーメール』は、各大陸の出場国の内訳について、アジア8・5、欧州16、南米6・5、アフリカ9、北中米カリブ海6・5、オセアニア1・5と予想(おそらく大きくハズレることはないだろう)。これを現時点でのアジア最終予選の順位に当てはめると、イラン、サウジアラビア、韓国、日本、ウズベキスタン、オーストラリア、シリア、UAE、そしてイラクかカタールがプレーオフに回るということになる(この改革を「中国への配慮」とする意見を散見するが、その中国が入っていないところがミソ)。

 とはいえ私自身、今回の改革については「改悪」と思いつつ、全面的に反対できない弱みもある。それは他ならぬ日本が、出場国拡大の恩恵を受けてワールドカップ出場を果たしたという事実があるからだ。また、私が愛して止まない「小さな国々」にも本大会へのチャンスが広がることは、それはそれで素晴らしいことだとも思っている。とはいえ、彼らが目指している「夢の舞台」そのものの価値が毀損されてしまえば、それこそ本末転倒だろう。以下、現時点で私が感じている7つの危惧を開陳する。

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