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【無料記事】桜咲く天皇杯1回戦で考えたこと 今日の現場から(2017年4月22日@とうスタ)

 4月22日はJリーグではなく、天皇杯1回戦を取材。カードはとうスタで行われた、いわきFC(福島県代表)対ノルブリッツ北海道FC(北海道代表)である。県1部のいわきが、地域リーグの北海道を8-2の大差で破った試合については、本日スポナビでコラムアップされるので、今大会について思うところを短めにお伝えすることにしたい。

 試合当日の福島は、ちょうど満開の桜が見納めの時期と重なった。天皇杯1回戦と桜の両方を楽しめるというのは、実に稀有な体験である。4月に天皇杯が行われるのは、1932年(昭和8年)の第12回大会以来、実に85年ぶりのこと。余談ながら5.15事件が起こった年に行われた天皇杯は、わずか3チームの参加だったため、4月2日と3日に2試合が行われたのみであった。

 1回戦の日程が8月から4月に前倒しになったことで、その影響は当然ながら47都道府県協会にも及んだ。多くの地域では昨年12月から予選が行われていたし、ノルブリッツのように4月での公式戦に戸惑うチームもあった(北海道リーグは5月開幕)。そうした各地域の事情がありながら、これほどまでの大改革を断行した理由は、果たして何だったのだろうか?

 あらためて、今年の天皇杯の日程を確認しておこう。1回戦が4月22日と23日、2回戦が6月21日、3回戦が7月12日、ラウンド16(4回戦)が9月20日、準々決勝が10月25日、準決勝が12月23日、そして決勝が18年1月1日となっている。準決勝と決勝が少し詰まっているが、あとは1~2カ月のインターバルだ。準々決勝から決勝までの3試合を、わずか9日間で消化するような昨年の日程と比べると、こちらのほうがはるかにいい。

 一方で気になったのが、3回戦からラウンド16までが最も長くインターバルがとられていることだ。大会そのものは3回戦で一区切りとなり、ラウンド16に向けた抽選会が行われる。しかしなぜラウンド16の開催は、夏休みの集客が見込める8月ではなく、9月20日なのだろうか。そこで思い当たるのが、長年議論されてきたシーズン移行の話である。

 もしもJリーグのシーズンが秋春制となった場合、今年からの天皇杯のスケジュールと重ねて見ると「なるほどね」と納得できる。8月はリーグ戦もカップ戦も完全オフ。9月から新シーズンがスタートしたところで、天皇杯もいよいよ佳境に──というシナリオが何となく透けて見えるのは私だけだろうか? むしろ「シーズン移行への布石」と考えるなら、このタイミングでの大改革の理由は十分に成り立つ。

 個人的には、国内リーグの日程は今のままで良いと思うし、秋開幕にすることが本当に日本サッカーのためになるのかという疑念もある。よって上記したことは、単なる思いすごしであってほしいというのが正直なところだ。しかしながら、われわれが考えている以上に、シーズン移行に向けた動きは水面下で進んでいるのかもしれない。

<この稿、了>

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