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広瀬一郎の一番弟子が語る「わが師の恩」 中村聡宏(千葉商科大学専任講師)インタビュー<2/2>

©SBA

■「300チームのGMを入れ替える」壮大なプラン

――広瀬さんがスポーツ評論家としてのポジションを確立する一方で、今度は人材育成のほうにもシフトしていきます。タイミングとしては、いつごろだったと中村さんは認識されていますか?

中村 まさに経済産業研究所にいるとき、タイミングとしてはワールドカップの事後調査やJリーグ黎明期のガバナンスについて調査していた2003年でした。当時、スポーツ競技の全国リーグが29ありました。男女がある競技は、それぞれをカウントしてですが。で、各リーグに10チームあるとして、日本には290から300くらいのチームがあるんじゃないかと推測できる。300のチームがあるとして、それら全部のGM(ゼネラルマネジャー)をビジネスができる優秀な人材に入れ替えたら、日本のスポーツがもっとよくなるんじゃないか、というのが広瀬さんの仮説だったんです。

――いかにもあの人が考えそうですよね。壮大でありながら、彼なりのロジックがあるというところが。

中村 スポーツの経営者を300人育てるのであれば、1年で100人の受講生を集めて、そのうち10人から20人くらいの優秀な人間を輩出していけば、10年から20年くらいで全部入れ替えられるんじゃないかと。それがSMSを始める出発点でした。

――なるほど。SMSがスタートしたのはいつですか?

中村 03年の2月くらいから、スポーツ経営人材に必要な知見を持っていそうな方々を集めて、月いちの勉強会をはじめました。財団法人東京大学運動会、いわゆる東大の体育会が主催団体となって正式にキックオフしたのが同年10月です。勉強会を重ねる過程で、有識者の調整をしたり、議事録を作ったり、事務局の作業もさせていただいたりしていたので、僕はまさに企画段階から関わることになりました。

――1期生って何人ぐらい集まりました?

中村 85人です。有名な方では、北海道日本ハムファイターズのオーナーをされている大社啓二さん。名古屋グランパスのGMになられた下條佳明さん。他にも、現在、プロ野球、Jリーグ、Bリーグや各クラブ、競技団体などでご活躍されている方が多数いらっしゃいますね。実は最初、けっこう殺伐とした感じでした。「15万円もお金を集めて、広瀬はどんなことを教えてくれるんだ」という。

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