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Vol.04 北の大地で始まった「のんのん革命」 コンサドーレ札幌 (2013年・夏)より

■コンサドーレ札幌は「日本のビルバオ」?

 当てが外れるとは、このことである。7月7日、七夕の日曜日に札幌厚別で行われたJ2第23節、コンサドーレ札幌対アビスパ福岡のデーゲームは、時ならぬ猛暑の中でキックオフを迎えることとなった。

 今回の取材が決まった当初、「これで東京の暑さからしばし逃避できる」と欣喜雀躍したものだった。ところが関東地方に梅雨明けをもたらした高気圧は、そのまま一気に北海道まで到来。地元の人々も「この時期には珍しい暑さ」とこぼしていた。涼しい夏に慣れていた札幌の選手にとっては、いささか不利な気象条件であると言わざるを得ないだろう。

 それでも試合の主導権を握ったのは、ホームの札幌だった。12分、右MFの荒野拓馬からパスを受けたワントップの三上陽輔が、前線で少しタメを作ってから岡本賢明にラストパス。左から走り込んできた岡本は、巧みなステップを交えてから右足を振り抜き、これが待望の先制点となった。38分には、左サイドバック松本怜大からのクロスに荒野が飛び込み、右足ボレーで追加点。さらに45分には、岡本のスルーパスにダイアゴナルな動きから荒野が受け、相手GKの動きを見極めながらループ気味のシュートを決める。前半だけで3ゴール。この時点で勝負は決した。

 試合後、札幌のゴール裏からは久々に「すすきのへ行こう! すすきのへ行こう!」という勝利のチャントが沸き起こった。札幌のサポーターが喜んでいたのは、もちろん3試合ぶりの勝利で連敗を脱出した嬉しさもあっただろう。だが、それ以上に彼らを喜ばせたのは、結果を残した若手の存在である。21歳の三上と18歳の堀米悠斗は、そろってスタメン初出場。そして20歳の荒野は、プロ4年目にして初ゴールを記録した。

 あらためてメンバー表を見てみよう。すると、札幌の選手は非常に若いことに気付かされる。スタメン11名の平均年齢はジャスト24歳。ベンチも含めた18名の平均は22・9歳である。もうひとつ特徴的なのが、コンサドーレ札幌U-18の出身者が多いこと。この日のスタメンでは4名(三上、堀米、荒野、奈良竜樹)、ベンチも含めると合計8名が下部組織の出身者だ。

 かつてはベテラン依存型だった札幌は、いつの間にか育成型へと変貌していた。ある古参サポーターは、実感を込めてこんなコメントを残している。

「今のコンサは、トップに道産子の選手が多いのが嬉しいですよね。半分以上が北海道出身で、アカデミー出身。ですから『日本のビルバオ』と呼んでもいいんじゃないですか? これなら(北海道日本ハム)ファイターズにも威張れますよ。『北海道を名乗るなら、道産子でメンバーを集めてみろ』ってね(笑)」

J2に降格しても札幌サポが楽観できる理由

 試合後、すすきのにあるサッカーバー『オフサイド』を訪れてみた。サポーターが「すすきのへ行こう!」と歌っていたので、てっきり大騒ぎになっていると思っていたら、カウンターに客がひとりいるだけ。「いやあ、J2が日曜開催になってからは、試合後にハメを外すお客さんは減りましたね」と、何やら申し訳なさそうに初老のマスターが説明する。

 もっともこの店の場合、静かにグラスを傾けながら愛するクラブについて語り合うのが、正解なのかもしれない。店内のTVで流しているのは、基本的にコンサをはじめとするJリーグの試合のみ。たまに旧JFL時代の貴重な映像も見せてくれる。

 96年から始まるクラブの歴史について、ゴール裏の目撃者たちの肉声が聞けるのも、この店の魅力だ。初めてのトップリーグでの戦い。J1参入決定戦での失意。札幌ドームのスタンドを満員にした01年の快進撃。エメルソン、ウィル、フッキ、ダヴィといった歴代外国籍選手たち。膨大な債務超過と累積赤字から、フロントもサポーターも覚悟を決めた04年。そして4年ぶりのJ1復帰となった昨シーズンは、7試合を残して史上最速でのJ2降格となり、勝ち点1428敗、88失点、得失点差マイナス63などなど、J1ワースト記録を次々と塗り替えた。

 4シーズンにわたりチームを指揮してきた、石崎信弘は監督を辞任。強化費が前年の半分に圧縮され、多くの選手たちが契約更新できずに札幌から去っていった。高原寿康、高木純平、山本真希、大島秀夫らが契約満了により退団。元日本代表の中山雅史、元キャプテンの芳賀博信が現役引退。他にも少なからずの主力選手たちが、札幌の今後を案じながらクラブを離れていった。

 クラブがこのような状況に陥れば、サポーターが悲観的になるのは当然のことである。ところが私が話を聞いたサポーターは、いずれも現状をネガティブに捉えてはいなかった。「累積赤字が30億円まで膨らんで、フロントもサポーターも覚悟を決めた04年の状況と比べれば、まだましですよ(笑)」と笑顔で答える人もいるくらいだ。

 彼らが楽観する理由は、大きくふたつ。まず、アカデミーから優秀な選手が育ち、次々とトップチームに昇格していること。そして元札幌の選手で、道内での知名度が高い野々村芳和が、今季から新社長に就任したこと。この「アカデミー」と「新社長」こそが、今回の札幌取材のキーワードである。

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