宇都宮徹壱ウェブマガジン

「僕自身、J2は大好きですよ(笑)」「来ないでJ2」botインタビュー<1/2>

 さてお立会い。今週はJ2ファンなら知らぬ者がいないであろう、「来ないでJ2」botの中の人へのインタビューをお届けする。「来ないでJ2」については、拙著『J2 & J3 フットボール漫遊記』のプロローグでも言及している。以下、引用しよう。

「J2に来ないで 観客動員数がじわじわと減っていくよ」

「J2に来ないで 選手名鑑の写真が小さいよ」

「J2に来ないで シャトルバスの本数が少ないよ」

「J2に来ないで 試合結果は超速テロップ」

「J2に来ないで その気がなくてもいつの間にか馴染んでしまうよ」

 これは『来ないでJ2(@dontcomej2)』というアカウントによるツイートの一部である。サッカーボールを擬人化したマスコット『Jリーグキング』をアイコンにして(ただし顔にはモザイクが入っている)、毎日定期的にJ2の「あるあるネタ」をツイートしていく。フォロワーは1万4590人(17年4月15日現在)。アカウントの主旨は「強いチームはJ2に来ないでください」というものらしいが、どんなに好意的に見ても自虐ネタのオンパレードである。

 実はこのインタビューは、『J2&J3フットボール漫遊記』を中の人に献本して、その感想を伺うことを当初の目的としていた。とはいえ、botの中の人の連絡先がわからない。唯一の手がかりとして浮上したのが、2年前の『燃えろ!J2党』というイベントで、どうやら中の人が出演していたらしいことだ(参照)。そこでJ2党の関係者に問い合わせて、ご本人のメールアドレスを入手。何とかコンタクトを取ることができた。

 その後の交渉の結果、「取材を受けてもよい」という言質をいただくことができたのだが、先方はかなり忙しい方らしく、私も国内外の取材が続いていたため、先月の11日にようやくインタビュー取材が実現の運びとなった。素顔や氏名はもちろん、出身地やサポートクラブを一切明かしていない中の人だが、本稿を読めばその人となりがうっすらと見えてくることだろう。J2ファンなら必読のインタビュー。最後までお楽しみいただければ幸いである。(取材日:2017年9月11日@東京)

<目次>

*「趣味みたいな感じでやっているbotですから」

*すぐにJ1に復帰するクラブ、ずるずるとJ2に残るクラブ

*「昇格できない文化」が定着する背景とは?

*もうすぐ「J2が嫌いになる季節」がやってくる?

*J2を本格的に見始めたのは2009年から

*「とあるチーム」がJ1に昇格したらbotはどうなる?

■「趣味みたいな感じでやっているbotですから」

――今日はよろしくお願いします。まずは今回、私の取材を受けようと思った理由からお話しいただけますか?

中の人 単純なことです。何かしゃべった方が面白いかなと。以前、『燃えろ!J2党』に出させていただいたときも同じ理由でした。

――J2党の時は、今日ご持参いただいたマスクを付けて出演されたと。

中の人 最初は付けようと思ったんですけど、面倒になって(苦笑)。会場のお客さんには「ネットで上げないで」とお願いした上で、顔出しで話していました。

――反響はどうでした?

中の人 「来ないでJ2」って、他のアカウントと交流をまったくやっていないんですね。ですから、他からどう思われているのかぜんぜん知らなかったんですけど、(イベントのあとに)エゴサーチをしてみたら、それなりに面白がられていたみたいです。

――なるほど。さて、今回のインタビューのきっかけとなったのは、拙著『J2 & J3 フットボール漫遊記』のプロローグで、「来ないでJ2」について言及したのがきっかけでした。それでツテを頼りながら、中の人に献本させていただいたんですけど、あらためて感想をいただけますか?

中の人 プロローグの、しかも出だしから言及されていたので、まあびっくりしましたね。本当に、趣味みたいな感じでやっているbotですから、まさかこんな扱いをされるとは思ってもみませんでした(笑)。

――本書がJ1ではなく、J2やJ3のクラブをあえて取り上げた点については、いかがでしょう?

中の人 僕自身、J2が好きだし面白いと思っている人間なので、いろいろ楽しませてもらいました。特に下(地域リーグやJFL)から上がってきて、それぞれ独自の文化を作ろうとしている地方クラブなんか、すごくキラキラしているように感じられますよね。その反面、そうでないJ2クラブもある。

――要するに、J1から落ちてきたクラブですよね。

中の人 そうです。僕はどこのクラブを応援しているか、あえて明かしていないんですけど、この本の中ではジェフユナイテッド千葉の章がやっぱり気になりました。当時、テクニカルダイレクターだった斉藤和夫さんが出てきますよね。その中で、「何が何でもJ1復帰」というクラブの姿勢を反省してか、「サポーターも単に勝った、負けただけではないものを求めていると思います」っていうことを言っているんですよね。でも、僕に言わせれば、それってまったくの見当違いです。

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