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【無料公開】特別座談会「スタンド目線で語る20年前の歓喜」 サポーターはジョホールバルで何を見たのか?<2/2>

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■記憶に焼き付いている城の同点ゴール

――ここからは試合を振り返ってみたいと思います。前半39分、中山雅史のゴールで日本が先制します。これで「行ける!」って思いました?

全員 思いました!

石井 行けるっていうか、このままリズムに乗れると思いましたね。時間帯も前半の終了間際でしたから、後半もこのまま行ってほしいなと。

成田 ゴンのゴールで、雰囲気というか流れがこっちに来ている感じでしたね。スタンドもほとんどが日本人で、このまま行けそうな感じがありました。

――ハーフタイムはどんな感じだったんでしょうか?

石井 あと45分、あと45分でワールドカップに行けるんだっていう気持ちで高ぶっていましたね。

大場 私はクアラルンプール(アトランタ五輪予選)の時の方が、もっと緊張していましたね。ワールドカップ初出場も歴史的なことですけど、28年ぶりの五輪出場が決まる時のドキドキ感を一度経験していますから。だからどちらかというと、帰りの飛行機のほうが気になっていました(笑)。

――日本サポーターのさまざまな思いが渦巻く中、後半が始まります。すると早々にアジジに同点ゴール(1分)、さらにダエイに逆転ゴールを決められてしまいます(14分)。

石井 失点シーンは、僕らの反対側だったので、何が起こったのかよくわからなかったし、よく飲み込めなかったというのが正直なところです。

成田 「やっぱりダエイか!」と思いましたね。もともと恐い存在だったじゃないですか。でも、だからといって僕らが負けるとは思わなかったし、むしろ「僕らの応援で勝たせよう!」という気持ちのほうが高まりましたよね。

――後半18分、ベンチはカズ(三浦知良)とゴンを下げて、城(彰二)と呂比須が投入されます。カズの「え、俺?!」というゼスチャーが話題になりましたが、スタンドではこの交代をどう見ていました?

大場 「まあ、そうかな」くらいな感じでした。

成田 僕もそうですね。カズに導かれて、ここまで来たという気持ちはあったけど、あの試合はそれほどカズが活躍できてなかったのもあるし、ここで何かを変えないといけないと思っていましたから。ですから僕も、納得の交代でしたね。

――結果として後半31分に城が同点ゴールを決めます。

住吉 僕も石井くんも、城が決めた側のゴール裏にいたので、ゴールの軌跡ははっきり見えました。ただし、あのゴールだけだったんですよね。残りの4ゴールは全部、僕らとは反対側で決まっているので、それだけに城のゴールは印象的でした。

石井 僕は日本のすべてのゴールに絡んだ、中田のプレーが一番印象に残っています。僕自身はベルマーレのファンで、彼のことはデビューの頃からずっと見ていましたけど、おそらくベストの試合だったんじゃないでしょうか。特に中田の折り返しから、城がヘディングで決める2点目──。目が見えなくなって17年経ちますけど、あのシーンは今でも鮮明に覚えていますね。

――このあとの岡野の投入もそうですけど、岡田さんの采配はものすごく的確だったんですよね。でも、当時の報道を読み返してみると、意外と岡田さんに関する言及が少ない。

成田 僕自身は当時、監督による戦術やチームマネジメントとかって、それほど考えていなかったですね。監督によって戦術が変わり、チームも変わっていくというのを初めて意識したのは、この次のフィリップ・トルシエが出てきてからだと思います。

山根 加茂(周)さんが監督のままだったら、おそらくカズを途中で下げることはしなかったと思います。もちろんリスペクトしていますけど、決して好調ではないカズを外すかどうかというのが重要な時期でした。その重要な決断をしたのが、岡田さんだったと思っています。

――そのカズが20年後も現役でいるとは、当時は誰も想像できなかったでしょうね。

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