宇都宮徹壱ウェブマガジン

VONDS市原FCはいかに全社を戦い、どう地域CLに臨むのか? WMイベント「セルビア人指導者が見た日本のアンダーカテゴリー」<1/2>

 今月24日、いよいよ地域CLの決勝ラウンドが千葉県のゼットエーオリプリスタジアムで開催される。ここにコマを進めたのは、コバルトーレ女川(東北/宮城県)、テゲバジャーロ宮崎(九州/宮崎県)、VONDS市原FC(関東/千葉県)、アミティエSC京都(関西/京都府)の4チーム。いずれも決勝ラウンド進出は初である。

 今回は、先月27日に東京・高円寺のKITEN!で開催されたイベント、「セルビア人指導者が見た日本のアンダーカテゴリー」の模様をお届けする。ゲストにお招きしたのは「ゼムさん」ことVONDS市原のゼムノビッチ・ズドラブコ監督。そして「セルビアつながり」ということで、国際ジャーナリストで通訳の千田善さんにも同席していただいた。

 ゼムさんが故国ユーゴスラビアを離れて、日本の土を踏んだのは22年前のこと。清水エスパルス監督時代(00~02年)には、天皇杯とゼロックススーパーカップをクラブにもたらしている。その後も一時期を除いて日本での生活を続けながら、さまざまな形で日本サッカー界に貢献。昨年に関東リーグ1部のVONDS市原の監督に就任し、今季は見事リーグ優勝を果たして、JFL昇格まであと一歩のところまで来ている。

 日本語に堪能で、日本サッカー界に知悉しているゼムさんだが、やはりヨーロッパのスタンダードがベースにある。そんな彼にとって、Jリーグ以下のカテゴリー、とりわけ過酷な日程で知られる全社(全国社会人サッカー選手権大会)や地域CLのシステムはどのように映るのか? 今回のイベントで明らかにしたかったのは、まさにそこの部分であった。その一方で、旧ユーゴスラビア諸国の地域リーグ事情や日本の育成の課題など、話題は多岐にわたったのだが、本稿ではテーマを地域リーグに絞ってお届けする。

 なおKITEN!さんでは今月30日に宇都宮徹壱WMプレゼンツ・Jクラブ関東支部サポーター大座談会も開催される。興味がある方は、こちらのほうも是非ご参加いただきたい。WMでは来年も、こうしたイベントを積極的に開催していく予定だ(収録:2017年10月27日@東京)

<目次>

*ゼムさんが日本にやってきた理由とは?

*知られざる「VONDS」の名前の由来

*「全社優勝のメリットを作ってほしい」

*「5人交代」がありがたかった理由

*「死のグループ」の対戦相手をどう見るか?

*1次ラウンドの1位突破には自信あり!

提供:VONDS市原FC

■ゼムさんが日本にやってきた理由とは?

――今日はよろしくお願いします。本題に入る前に、まずは今日のゲストである、ゼムノビッチさんと千田さんの関係性から確認させていただきたいと思います。おふたりが初めてお会いになったタイミングですが、千田さん覚えていますか?

千田 オシムさんつながりで知り合ったのが最初かなと思いますね。

ゼム オシムさんが日本代表監督になってからね。

千田 そうだ、ゼムさんが練習を見に来て、やあやあって挨拶したのが初めてかな。だから、もう10年前だね。

――ゼムノビッチさんとオシムさんの接点のスタートはどこだったんですか。

ゼム FKテレオプティックのクラブでプレーしていた時ですね。パルチザン(・ベオグラード)のサテライトのチーム。その時、パルチザンの監督だったのがオシムさんで、ユーゴスラビア代表監督も兼務していましたね。

――ご自身が指導者になって、オシムさんの影響を感じることはあります?

ゼム どうでしょう。オシムさんは普通の人が考えないような、特別な意見とかアイデアを持っている人。彼のチーム、いつも相手が対応できないようがサッカーをやっていた。クラブでも代表でもね。それでいて魅力的。だからフォローするのは難しいけれど、すごく楽しいですね。

――そんなゼムノビッチさんが来日したのが、奥さまが日本語の先生をされていていたのがきっかけだそうですが

ゼム 奥さんがベオグラード大学で日本語の勉強をしていて、卒業してから日本でもっと勉強したいと。ちょうどユーゴの内戦が始まりそうな頃でした。それでイタリアのワールドカップに出場したときのオシムさんのアシスタント(イヴァン・チャブリノヴィッチ)が、PJMフューチャーズの監督になって、僕を呼んでくれたんですね。

――じゃあ最初は、奥さんと鳥栖にいたんですか?

ゼム 違う、浜松。PJMって、最初は浜松のチームだったんです。近くに藤枝ブルックスがあって、静岡には他にジュビロ磐田と清水エスパルスがあったから、ブルックスは福岡に、PJMは鳥栖に引っ越して、それぞれアビスパ福岡と鳥栖フューチャーズになったのね。今のサガン鳥栖。

――最近の若いJリーグファンが知らないような話を、セルビアの人が日本語でスラスラとしゃべっているのがすごいなと(笑)。それでゼムさんが清水の監督になるきっかけですが、千葉で少年チームを指導していたときに、清水と縁がある解説者の小谷泰介さんがたまたま見に来ていて、「なんてモダンなサッカーをやっているんだ! 指導者に会わせてくれ」と言って、現れたのがセルビア人だったと(笑)。この話は本当ですか?

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