宇都宮徹壱ウェブマガジン

なぜ長崎の番記者は「出禁」となったのか? 藤原裕久(ライター)インタビュー<1/2>

 いろいろなことがあった今年のJリーグ。川崎フロンターレのJ1初制覇と並んで、個人的に強く印象に残ったのが、V・ファーレン長崎のJ1自動昇格である。もっとも長崎の昇格の物語は、ただ単に「強かった」という話で完結するものではない。そこには、われわれの想像を絶する紆余曲折があった。

 今季の開幕直前、クラブは1億2000万円もの赤字を計上。この責任をとる形で、当時の社長と専務とGMが辞表を提出する異常事態に発展する。4月には有力スポンサーのジャパネットホールディングスがクラブの子会社化を発表。お茶の間でもおなじみの高田明氏が就任するも、今度は旧経営陣時代の入場者数水増しが発覚した。

 つまり今季の長崎はピッチ内の戦いのみならず、ピッチ外でのさまざまトラブルとそれにまつわる風評と戦いながら、「J1昇格」という悲願を果たしたのである。そんな長崎の振幅の激しかったシーズンを精力的に取材し、渾身のレポートを書き続けていたのが、今回のゲストであるライターの藤原裕久さん。藤原さんの原稿は、フットボールチャンネルでもたびたび掲載されているので、ご覧になった方も少なくないだろう(参照)

 そんな藤原さんもまた、今季はチームと同様、逆境の中でライター活動を続けていた。というのも今季の開幕直後、藤原さんはクラブ側からいきなり「出禁」を言い渡されてしまったからだ。番記者だった藤原さんにとり、出禁はまさに死活問題。そうした困難に遭いながらも、丁寧かつ精力的な取材を続けながら、愛するクラブの危機を訴え続けてきた。その仕事ぶりは、同業者として純粋にリスペクトするしかない。

 実は今回の藤原さんへのインタビューは、今年8月に行われたものである。公開に4カ月もかかったのは、今季の長崎の戦いが終わるのを待っていたからだ。メディアとして、それほど大きな影響力を持ち得ない当WMだが、それでもJ1昇格を目指す長崎の躍進に水を差すようなことはあってはならない。そんな自制が最後まで働いた。

 晴れてJ1昇格の偉業が達成され、藤原さんの出禁も解けた今、あらためて「長崎に起こったこと」について、番記者の貴重な証言から明らかにしていくことにしたい。本稿を公開に踏み切った一番の理由は、長崎で起こったことは他の地方クラブでも起こり得ると強く感じたからだ。最後までお付き合いいただければ幸いである。(取材日:2017年8月4日@長崎県諫早市)

<目次>

*「目的はスクープを出すことではなくクラブが良くなること」

*出禁でも話しかけてくれた選手と高木監督

*「自分のクラブ愛が負けてしまうことが許せなかった」

*「選手との約束」だった設立10周年のOB戦

*新体制になって発覚した入場者数水増し問題

*「サポーターがクラブの抑止力にならなくなってきている」

■「目的はスクープを出すことではなくクラブが良くなること」

──さっそくですが、ライターにとって致命的な「出禁」となった経緯について伺いたいと思います。かなりきわどい話もあるかと思いますので、言える範囲でけっこうですが。

藤原 発端は昨年(16年)の2月くらいでしたね。仕事柄、クラブ関係者から愚痴を聞くことが多かったのですが、その頃くらいから話の傾向が変わってきたんですよ。何というか、パワハラめいた話をよく耳にするようになってきたんです。私自身、10年以上にわたって長崎のサッカー界の情報源をあちこちに持っていて、そこから入ってくる情報を照合すると「これはクラブがおかしな方向に向かい始めているぞ」と考えるようになったんです。

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