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【無料公開】蹴球本序評『ノンリーグ・フットボールについて私が知っている二、三の事柄』吉田鋳造著

 2018年になって、およそ1年ぶりに当コーナーを再開させようと思う。その前に、当コーナーが休眠状態になっていた理由について触れておきたい。端的にいえば、去年の私は読書時間を確保することが、極端に困難な状況だったのである。加えて、当初は「献本ありがとうございます!」という主旨で始めたのが、いつの間にか「書評コーナー」と認識されるようになり、不必要な義務感を覚えるようになってしまったのも反省材料だ。

 とはいえ、これ以上の不義理を重ねるわけにはいかない。そこで仕切り直すにあたり、まず当コーナーを「蹴球本序評」と改めることにした。つまり序章(あるいは第1章)を読んだら、すぐさま御礼がてら感想をアップする。そして「面白い!」と思ったらそのまま読み進めるし、「ちょっと気が進まない」と思ったらそこで終わり。要はワインのテイスティングのようなものとご理解いただきたい。

 もっとも、これまで10冊の書籍を上梓しているブックライターの端くれとして言わせていただくと、序章部分の「つかみ」は極めて重要である。いかに読者をこちら側に引き込み、ページを次から次へとめくらせ、そして「これは買いだ!」と思わせるか。それはまさに、序章の出来いかんに懸かっている。そんなわけで当コーナーは「書評」ではなく、あくまで「序評」。そこをご理解いただいた上で、ご参考いただければ幸いである。

 さて、今回ご紹介するのがこちら。私が「地域リーグの語り部」と尊敬して止まない、吉田鋳造さんの最新作である。もっとも本書は書籍コードがない、いわゆる同人誌(と著者自身も言っているので問題ないだろう)。今のところネットでの販売がメインとなっている

 さっそく、書き出しの部分を抜き出してみよう。

 2017年・福井全社の会場と日程が明らかになって、当然のように未観戦ピッチ優先で予定を立てたのだけど、三国運動公園の多目的だけは行けそうにない。行けない以上はしょうがないと諦めていたところ、ネット経由で「北信越リーグであるよ」との知らせが。福井なら日帰りで行けるな、と向かったわけだ。

 いかがであろうか。「福井全社」とか「未観戦ピッチ優先」とか「三国運動公園の多目的」とか、サッカーファンを自認する人でも「?」がたくさん頭上に並ぶはずだ。そう、本書は「徹底的に読者を選ぶ本」なのである。それも吉田鋳造総合研究所の熱心な読者でないと、おそらく理解できないフレーズが頻出する(「福井なら日帰りで行けるな」というくだりも、鋳造さんが岐阜在住であることを知っているのが前提である)。

 私自身、JFL以下のカテゴリー(本書で言うところの「ノンリーグ」)は大好物なので、本書を非常に興味深く読ませていただいた。加えて本書は、鋳造さんの20年以上にわたるノンリーグ観戦の集大成であり、一級品の資料として今後も参考にさせていただくことになるだろう。「いい仕事をしているよなあ」と思う一方で、「でも売れないだろうなあ」というのが率直な感想。とはいえ同人誌というのは、もともとそういうものなのかもしれないが。

 評価できる点としては、前作の『ちゅうぞうのおしごと!』に比べて手頃なサイズとなり、なにより文章を縦書きにしたことを挙げておきたい。こういった「読みやすさの工夫」もまた、ブックライターは心を砕くべきだと思う。なお来月11日と12日、横浜で開催されるヨコハマ・フットボール映画祭でも本書も発売されるようなので、ご来場されたらぜひ手にとっていただきたい。定価1200円+税。

【引き続き読みたい度】☆☆☆☆☆

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