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今年のヨコハマ・フットボール映画祭が一味違う理由 福島成人(YFFF実行委員長)インタビュー<1/2>

© 2016 Celtic Soul, Markham Street Films

 今年もこの季節が近づいてきた。国内外のフットボール映画を上映するヨコハマ・フットボール映画祭(YFFF)2018。第8回となる今回は、2月11日と12日に横浜市開港記念会館で開催される。当WMでは、毎年このYFFFのラインナップについて、実行委員長の福島成人さんに解説をお願いしている。映画祭の準備でお忙しい中、今年も快く取材に応じてくれた福島さんには、この場を借りて感謝申し上げたい。

 世界的に有名なサポーターソングのルーツを辿る作品や、知られざるイスラエルの右派クラブの緊迫したレポート、さらにはパラリンピアンに密着したドキュメンタリーなど、今年も面白そうな作品が目白押しのYFFF。それらの上映作品もさることながら、今回はサッカーファンの交流の場という面でも運営サイドは力を入れている。そういった新しい試みも含めて、福島さんにさっそく語っていただくことにしよう。

<目次>

*今年のYFFFは横浜市開港記念会館で開催!

*ハンガリーで生まれNY経由で広まった「ユルネバ」

*ヨーロッパからはユヴェントスとセルティック

*イスラエル右派クラブの差別とアフリカの多様性

*2020年パラリンピックのスター候補にも注目!

*さまざまなサッカーファンの交流の場でもあるYFFF

■今年のYFFFは横浜市開港記念会館で開催!

──今日はよろしくお願いします。YFFFについてはメルマガ時代からご紹介させていただいていますが、早いもので8回目ですか。

福島 そうですね、ワールドカップ2大会分ですよ(笑)。第1回が2011年ですから南アフリカ大会の次の年でした。

──最初はレトロな佇まいが魅力のシネマ・ジャック&ベティ、その次の会場がブリリア・ショートショートシアターでした。そのブリリアが先ごろ閉館となったというのも驚きだったんですが、今回はどちらで開催されるのでしょうか?

福島 横浜市開港記念会館です。1917年に作られた、歴史のある公会堂なんですね。レンガ造りでステンドグラスのロビーもあったりして、すごく雰囲気のある会場です。横浜市の公共施設なので、僕が半年前の朝に行って、抽選の結果、2月11日と12日を押さえることができました。

──何だか、草サッカーの会場を押さえるみたいな感じですね(笑)。

福島 まさにそんな感じです(笑)。東横線直通の日本大通り駅からすぐなので、アクセスはとてもいいです。今回は期間が2日間と、いつもよりコンパクトですけど、その代わり会場が広くなります。ブリリアが130席でしたが、今回は1階席だけで280席、2階席を合わせると400人くらいのお客さんを収容できます。それに加えて、会議室も4つ押さえていますので、物販のスペースも拡張することになりました。

──会場が変わったことで、運営面でもいろいろな変化があったと思うんですが。

福島 そうですね。これまでは映画館を借りていたので、機材の手配からチケットのもぎりからすべてお任せだったんです。僕らはホームページや印刷物のデザインとか、映画の日本語字幕といったところに注力していればよかった。ところが今回は、すべてを自分たちで賄わなければならなくなって、そこが大変といえば大変でしたね。

──スタッフの人数も増えましたね。しかも最近は学生さんが主体みたいですが。

福島 トータルで50人くらいの皆さんに手伝ってもらっています。今回はTFUTOKYO FOOTBALL UNIVERSITY)といって、みんなでJリーグを見に行こうという大学生のサークルの皆さんに手伝ってもらっています。YFFFが始まった当初は、身近なサッカー仲間とわいわいやっている感じでしたけど、回を重ねるうちに皆さんも生活のステージが変わってきますからね。

──変わっていないのは、われわれくらいですかね(苦笑)。

福島 それプラス、組織としても世代交代というか、新陳代謝していく必要があるのかなと思っています。ですから最近は、マネジメントの仕事の分量も増えてきました。僕自身は映画もサッカーも大好きな人間だし、こういうイベントであれば一番実力を発揮できるということで頑張ってきたんですけど、今後も続けていくのであれば、いずれ誰かに引き継ぐことも考えないといけないかなって思うこともあります。

■ハンガリーで生まれNY経由で広まった「ユルネバ」

──回を重ねていろいろ思うところもあるかと思いますが、さっそく今回のラインナップをご紹介いただこうと思います。まずは『YOU’LL NEVER WALK ALONE』。いわゆる「ユルネバ」ですが、これは今回の一押しでしょうか?

© FLORIANFILM 2017

福島 そうなんですよ(笑)。「ユルネバ」といえば、JリーグではFC東京、プレミアではリバプール、ブンデスではドルトムントが有名ですよね。この映画は、その「ユルネバ」のルーツを辿っていくという作品です。

──ウィキペディアによると、それ以外にもこの曲を歌っているクラブは多いみたいですね。スコットランドではセルティック、オランダではアヤックス、ベルギーではクラブ・ブルージュ、クロアチアではディナモ・ザグレブ、ドイツだとドルトムントの他にバイエルン、シュトゥットガルト、シャルケ、ブレーメンなどたくさんあります。つまり世界中のサッカーファンにとってお馴染みのメロディであるわけですが、そのルーツを辿るという発想と視点がまず素晴らしいですね。

福島 実はルーツを辿っていくと、1909年にハンガリーで上演されたオペラに行き着くんですね。1909年といえばドルトムントが設立された年なんですけど。そのオペラの作者が、第2次世界大戦を逃れるように大西洋を渡ってニューヨークに流れ着くんです。ちょうどブロードウェイ・ミュージカルが隆盛を極めている中、そのハンガリーの劇作家にオファーが舞い込んで作られたのが『回転木馬』というミュージカル。そこで初めて『YOU’LL NEVER WALK ALONE』っていう曲が作られたんですよ。

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