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【無料公開】蹴球本序評『監督たちの流儀 サッカー監督にみるマネジメントの妙』西部謙司著

 尊敬する先輩同業者のひとり、西部謙司さんの新著が届いた。タイトルのとおり、日本で仕事をする監督たちの「マネジメントの妙」について、それぞれ西部さん独自の視点から描かれている。第1章の「ハイリスク」で登場するのは、ジェフユナイテッド千葉のファン・エスナイデル監督。その冒頭部分を抜き出してみる。

 ジェフユナイテッド千葉に初のアルゼンチン人監督がやって来た。そして、まもなく食事のメニューからカレーが消えた。

 消えたのはカレーだけでなく、チキンのトマト煮はチキンの素焼きに変わり、白米は玄米になった。ファン・エスナイデル監督にとって“ソースは敵”らしい。

「おかずを食べているのに、ご飯にカレーをかけて食べるのは余分だ。日本人は何でもソースをかけすぎる」

 食い物の恨みは恐い。キャンプで厳しい食事制限をかけてきた新監督に対して、選手たちの反応は反発とまでいかないがそれなりに微妙な感じではあった。ただ、食事制限に関してはエスナイデル監督が正しいのではないかと思う。すべてが正しいというより、食事をコントロールするという基本的な態度についてだ。日本はその点が逆にアバウトすぎるのではないか。

 いかがであろうか。のっけから「メニューからカレーが消えた」である。「書き出しの上手さ」は、西部さんのライティングの真骨頂だ。食いつきのいいところにパスを送り、相手(読者)が前に出てきたら意表を突くサイドチェンジ。そこから一気に自分のペースに持っていく。そのプロセスが実に巧みなのである。

 もともと戦術解説に定評がある西部さんだが、個人的には監督や選手の論評に冴えを感じている。本書はまさに、得意中の得意とも言えるジャンルだろう。エスナイデル以降に登場するのは、風間八宏、ミハイロ・ペトロヴィッチ、西野朗、森保一、長谷川健太、堀孝史、鬼木達、反町康治、チョウ・キジェ、そしてハンス・オフトからヴァイッド・ハリルホジッチに至る歴代日本代表監督。

 非常に読みやすいがゆえに、あっという間に読みえてしまうところに少し物足りなさを感じた。西部さんの重厚な作品も久々に読んでみたい。定価1400円+税。

【引き続き読みたい度】☆☆☆☆★

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