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宇都宮徹壱ウェブマガジン

2年目のDAZNが目指す「スポーツの民主化」とは何か? アカウントディレクターが語るJリーグの将来性<1/2>

 2018年のJリーグが無事に開幕したということで、今週はJリーグ中継をスタートさせて2シーズン目のDAZNにフォーカスすることにしたい。

 実はこの企画、昨年11月から「DAZN元年を総括する」というテーマで先方にオファーをしていた。その後、「シーズンが終わってから」「来季の体制が固まってから」「今年の方針会見が終わったら」お願いします、という感じで延び延びとなり、ようやく2月上旬に取材がセッティングされることとなった(もちろん広報スタッフの方からは、リスケのたびに丁寧なお詫びのメールをいただき、かえって恐縮したくらいである)。

 とはいえ、結果的にはこのタイミングでよかったと思っている。というのも、この直後にスポナビライブの撤退やプロ野球11球団の全試合配信といった、DAZNやOTT(オーバー・ザ・トップ)サービスに関する大きなニュースが続いたからだ(余談ながら、スポナビライブの撤退については発表前に情報をつかんでいたので、今回の取材でもそれを踏まえながらインタビューしている)。

 今回、私の取材に応じてくれたのは、DAZNのアカウントディレクターであるディーン・サドラーさん。日本滞在30年のニュージーランド人で、2014年からDAZNのサービスを提供するパフォーム・グループで働いている。本稿をアップするのに先立ち、そのダイジェスト版をYahoo!ニュース個人の記事としてまとめた。本稿はその完全版である。

 ところで、このYahoo!ニュース個人での記事には、さまざまな反響があった。そんな中、文中のこのくだりに関して、何人かの方からツッコミをいただいている。

 思えば去年の今ごろ、私を含めて多くのJリーグファンが、Jリーグの独占中継がスカパー!からDAZNに切り替わることに少なからぬ不安を抱いていた。(中略)ところが、江戸末期の民衆が大政奉還や明治維新をすんなり受け入れたように、Jリーグファンも驚くべき柔軟性をもってライブストリーミングという新サービスを楽しんでいる(もちろん当初は「仕方がない」という心情もあっただろうが)。

 反論を要約すると「去年はDAZN一択で選択の余地がなかったのだから『受け入れた』とは言えない」というものである。なるほど、主張はよく理解できる。かくいう私も「面倒くさいなあ」と思いながらDAZNと契約したし、画質の悪さにも最初はものすごく閉口した。しかし、DAZNへのアクセス自体はさほど難しいものではなかったし、画質についてもシーズン終盤にはかなり改善されているように感じられた。そして何より、OTTというサービスそのものへの抵抗感が、自分でも驚くほど薄らいでいたのである。

 私がここで「受け入れた」と表現したのは、つまるところ「慣れた」とか「抵抗感が薄れた」というニュアンスが多分に含まれている。選択の余地がなかったのも、当初は「仕方がない」と思ったのも、いずれも事実だ。しかしDAZNやOTTを「受け入れ難い」と真っ向から否定し、その後は一切Jリーグ中継を見なくなったというファンは、少なくとも私の周りにはいないし、そういった話をSNSなどで読んだこともない。

「受け入れた」という表現がお気に召さなかったとしても、DAZNが「スポーツ中継における視聴環境の変化の敷居を下げた」ことについては異論はないと思う。今回のサドラーさんへのインタビューでは、パフォーム・グループが当初より日本のマーケットに注目し、確信をもってJリーグ放映権の入札に参加した背景、そして彼らがJリーグに投資することで何を目指しているのかなど、さまざまな興味深い証言を引き出すことができた。最後までお読みいただければ幸いである。(取材日:2018年2月6日@東京)

<目次>

*「まだDAZNという名前すらない時期」に入札に参加

*入札の強力なライバル、スカパー!とソフトバンク

*「Jリーグに投資することで、より価値を高めていきたい」

*ドイツのDAZNでは神戸の試合が注目されている?

*補完関係を築きつつあるパフォームとJリーグ

*「Jリーグをさらに華やかな時代に持っていくために」

【付記】Jリーグとパフォーム・グループとの大型契約締結に関して、興味深いインタビューが最近アップされた。こちらと併せてお読みいただくことをお勧めする。

■「まだDAZNという名前すらない時期」に入札に参加

──今日はよろしくお願いします。いただいたお名刺には「アカウントディレクター」とありますが、具体的にはどんなお仕事なんでしょうか?

サドラー 簡単に言いますと、Jリーグ関連の責任者。Jリーグとの戦略・施策を共に検討し、実行することとクラブとの連携を取ることが主な業務です。

──現職に就く前のお話を少し伺いたいのですが、日本での滞在は長いんでしょうか。というのも、日本語が大変に流暢なものですから。

サドラー 日本にはもう30年います。出身はニュージーランドで、北海道大学に留学。卒業後は東芝に入社して、ラグビーをやりながら普通のサラリーマン生活を送っていました。97年に引退して、3年くらい東芝に残ってマーケティングの仕事をしていました。それから自分の会社を立ち上げて、のちにパフォームの社長となるジェームズ・ラシュトンと出会うことになります。

──それはラシュトンさんがパフォームに入る前?

サドラー もともとジェームズは、パフォームの人だったんですね。日本でいろいろやりたいことがあったけれど、現地スタッフもいないし、日本の市場に対する知識もない。一方で僕がやっていた会社も、いろいろやりたいことがあるんだけれど、資金がない。「じゃあ、一緒にやろう」ということで、会社を畳んで14年にパフォームに入りました。

──なるほど。14年というのはワールドカップイヤーですが、村井(満)さんが新しいJリーグチェアマンが就任した年でもあります。村井さんとの接点はその頃からですか?

サドラー そうです。ちょうどワールドカップが終わった直後にお会いしました。当時はまだDAZNのサービスを検討する前でしたから、まずはパフォームがどういう会社で、日本のサッカー界に対してどんなことを考えているかをお話しました。

──非常に興味深いですね。つまりDAZNのサービスが始まる3年前から、村井さんはディーンさんを通じて、パフォームの存在はご存じだったと。

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