【無料公開】「報道されない」開催国ブラジルの現在(再) 大野美夏(サッカージャーナリスト)インタビュー<2/2>
■ブラジルでの移動、宿泊、そして治安について
――そういった物価の高い国でワールドカップが開催されるわけですが、現地在住者の大野さんから、ブラジル行きを考えている人たちにいくつかアドバイスをいただきたいと思います。具体的なテーマを挙げるなら、やはり移動、宿泊、治安という感じでしょうかね?
大野 まず移動ですが、飛行機は大会に近づけば近づくほど高くなりますね。本大会の時期のリオ=サンパウロ間の値段って知っています? この間、ある会社がプロモーションの割引をやっていて、7万円か8万円くらい。片道ね。
――片道でその値段は、高くないですか?
大野 それが安くなってその値段。だからどんどん買われていっています。
――大会期間中に便が増えることもなさそうだから、かなり塞がりそうですね。
大野 さっきも言ったけど、サンパウロ国際空港は新ターミナル建設で便数が増えるかもしれない。でも、今のままでは塞がると思いますよ。定かではないけど、滑走路が増えているわけではないですから。抽選会が終わって会場が決まったら、すぐに予約が殺到するかもしれないですね。
――それこそイングランドがマナウスでやることになったら、えらいことになりそうですよね(編集部註:イングランドは6月14日、マナウスでイタリアと対戦することが決定)。
大野 えらいことですね、ほんとに。だから、早めに飛行機を抑えるっていうのがポイントでしょうね。
――宿泊についても、かなり値上がりが予想されますね。
大野 コンフェデの時の感覚だと、びっくりするでしょうね。特にリオの場合、もともと観光地ではあるんですけれど、ホテルがそれほど余っているわけではないんですよね。
――ざっと調べての印象ですけど、リオに比べるとサンパウロのほうが価格は良心的なような気がします。
大野 リオは経済の中心としての時代はもう終わっているんで。例えば日本の企業も、昔はけっこうリオに進出していたんだけど、今は完全にサンパウロが中心ですよね。だからホテルの数では、リオはかなわない。あと、値段ばかり気にして、あんまり怪しいところに泊まるのもね。この間のコンフェデで、ファベーラ(貧民街)の近くに泊まっていた日本人もいたみたいだけど。
――それ、私です(笑)。なかなか予算に見合うホテルが見つからなくて、ようやく見つけたのがえらい高台にあるペンションだったんですけど、エレベーターがない階段を何段も登って、「そういえばファベーラも高台に作られるんだよな」なんて思い出していたら、実は自分がいるところがファベーラのど真ん中でした(笑)。
大野 大丈夫でした?
――それこそ知らぬが仏で、何にも危険なことはなかったですけど、ひとには絶対に進めませんね。
大野 リオなんかでも、海岸あたりで強盗が出没するなんて話もありますからね。もちろん、大会期間中は警備もそれなりにしっかりしていると思いますけど。
――コンフェデの会場で「レシフェの治安は良くない」という話を聞いていましたけれど、海岸では銃を持った警察官がしっかり警備していたので、わりと安心して歩くことはできました。
大野 そうですね。最低限のことに気をつけて、身を守るというか、危険を察知することを心がければ、少なくともワールドカップ期間中は身ぐるみはがされるようなことはないと思います。ものすごい人混みだと、体中のポケットに手を入れられて全部すられることもあるので要注意ですが、ワールドカップの会場は普通に楽しめるんじゃないですかね。泥棒するような貧乏な人は会場に近づけませんし。
――じゃあ、そんなに神経質になる必要はないと。
大野 ないと思う。けっこう楽しめるんじゃないですかね。