宇都宮徹壱ウェブマガジン

「信念の人」が演じる喜劇のような悲劇 日本サッカー界の「今そこにある危機」

 4月9日の16時からJFAハウスで行われた、日本代表ヴァイッド・ハリルホジッチ監督の解任に関する記者会見。解任の理由について説明する、田嶋幸三JFA会長の姿をレンズに捉えながら、この人との「長い付き合い」について思いを巡らせている自分にハッとした。もしかしたら会見で語られている内容が、あまりにも理解に苦しむものであったため、無意識に現実逃避していたのかもしれない。

 初めて「タシマさん」とお会いしたのは、今から20年以上昔、おそらく1996年あたりだったと思う。当時の私は、サッカーの情報番組やビデオの製作をする会社に勤務。JFAのテクニカル系のビデオを製作していたときに、監修としてたびたびオフィスに訪れていたのが田嶋氏であった。とはいえ、当時ぺーぺーのアシスタントディレクターだった私のことは、きっと覚えてはいないだろう。

 初めてインタビューさせていただいたのは、強化委員会副委員長時代の2004年。Numberの仕事で、アテネ五輪に臨む日本代表について語っていただいている。ただし、この時もあまたいる書き手のひとりでしかなかったと思う。田嶋氏が明確に私の存在を認識するようになったのは、10年にミズノスポーツライター賞を受賞したときだろう。JFAの副会長に就任する直前だった田嶋氏は、わざわざ授賞式を訪れて「おめでとう!」と握手してくれた。とても分厚く、温もりが感じられる掌だったことをよく覚えている。

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