宇都宮徹壱ウェブマガジン

『WM外伝 徹マガの蹉跌を超えていけ!』 Vol.3 サッカーメディアが儲からない理由 text by 中村慎太郎

 ハリルホジッチ解任の報道から一週間。今回ほど怒ったことはない。そして、モヤモヤと怒りを一つの記事に叩きつけたところ20万ページビューを超えるバズ記事になった(参照)

 ハリルホジッチ監督について語るのはこの文章の趣旨ではないのでこのへんにするが、1つ言いたいのは、今回の件でサッカーメディアが得をするということだ。

 長い目で見ると市場規模の縮小に繋がる危険性もあるため損をするかもしれないが、少なくともW杯までの期間はかなり得をするはずだ。

 どうしてだろうか。1つには、不可解な事態を前にして、記事の需要が上がるからだ。ただし、不可解な事態が生じ、それを解明すればお金になるという単純な話ではない。

 それならば生物学者はみんな大金持ちのはずだ。世界に存在すると推定される生物は1億種とされているが、発見されているのはわずかに300万種だからである。しかし、新種を発見したところでお金にはならないのだ。

 今回はビジネスの話である。

 サッカーと金の話が、話題に上ることは多々ある。それは選手の年棒だったり、移籍金だったり、スタジアムの建設費であったりする。

 あるいはスポンサーからの巨額の資金をめぐる黒い陰謀論が話題になることもある。

 そのあたりはぼくも詳しくは知らないので、今回はぼくが見えている世界、サッカーメディアとお金の話をしようと思う。

 ただ、ぼくは「物書き」なので、視点は「どうしても物書きにお金が回ってこないのか」というものになる。もちろん、稼いでいる人もいることだろうが、それは一部の話で、どちらかというと「サッカーはお金にならない」と言っている人が多い印象がある。

 原稿料がいくらとか印税がいくらという具体的な話も多少はしようと思うのだが、ぼくがここで語りたいのは、サッカーメディアを運営していくことで大きく稼ぐのは構造的に難しいということだ。

 サッカー記事を書き続けて億万長者になることは極めて難しい。不可能ではないかもしれないが、同じ労力と情熱をかけた場合には、もっと楽にお金を稼ぐ方法は間違いなくある。

 ぼくは、長いこと大学にいて研究者を目指していたこともあり、ビジネスとは何たるかを知らぬまま三十路になってしまった。その後、サッカーメディアで記事を書いたり、本を出したりしたのだが、こういった仕事をしていっても生活を成立させるのが精一杯で、とてもじゃないけどそれ以上稼ぐことは出来ないと実感した(そして、迷走した)。

 昨年一年間、書店に勤務しながらビジネス書を読んだり、ビジネスマンと話したり、ビジネス系のイベントの裏方をしたりする中で、ビジネスの基本がわかってきた。

 ビジネスとは、誰かの悩みを解決し、その代価として金銭を得るものである。

 病気で苦しいときは医者に行く。代わりに医療費を払う。

 お腹が減る(食べないといずれ死ぬ)。だから食品を買う。

 家に「黒くて速い虫」が出現した。全力で防虫グッズを購入する。

 髪の毛がさみしくなってきた。養毛剤や植毛などにお金を使う。

 悩みがあって、その解決策をお金で買う。売る側の立場に立つと、悩みを解決するために汗をかくことで、報酬がもらえる。

 これが基本的な構造である。

 何かが売れているということは、何らかの悩みが存在していたということになる。

(残り 4231文字/全文: 5566文字)

ユーザー登録と購読手続が完了するとお読みいただけます。

ウェブマガジンのご案内

1 2
« 次の記事
前の記事 »

ページ先頭へ