宇都宮徹壱ウェブマガジン

カントナになれなかった「ケイスケ・ホンダ」『プロフェッショナル 仕事の流儀』に寄せて

 オンエア前からサッカーファンの間で(良くも悪くも)話題騒然となっていた、5月14日放映の『プロフェッショナル 仕事の流儀』(NHK。以下『プロフェッショナル』)を視聴した。サブタイトルは「ラスト・ミッション 本田圭佑のすべて」。当初、制作サイドが「ヴァイッド・ハリルホジッチ氏の日本代表監督解任の舞台裏を告白する」と告知したことで、炎上案件となったことは記憶に新しい。告知はすぐに削除されたが、軽率というよりもむしろ「確信犯ではなかったのか?」という疑念を抱いたまま、自宅のTVを凝視していた。

 今回の『プロフェッショナル』は、メキシコのパチューカCFに所属していた本田圭佑に今年2月から密着取材したもの。視聴した感想を述べる前に、まずは『プロフェッショナル』という番組そのものについての個人的な見解を述べておく。実は私は、この番組がちょっと苦手である。基本的にNHKが大好きな私だが、それでもスガシカオの『Progress』のイントロが流れてくると、内容を確認するまでもなく、条件反射的にチャンネルを変えてしまう。もちろん、スガシカオが嫌いなのではない。そうでなくて、番組のテイストがどうにも馴染めないのである。

 この番組のテイストを端的に述べるならば、それは取材対象に「全肯定」であることだ。人物ドキュメンタリーの場合、当事者のみならず周囲、さらには反対側の証言も本来は不可欠だと思っている。しかし『プロフェッショナル』の場合、そうした反証はもちろん、傍証となるものもほとんど出てこない。とにかく取材対象者の主張のみが語られ、橋本さとしのナレーションによって主張はさらに補強されていく。「そういうスタイルのドキュメンタリーだから」と言われればそれまで。だが、私にはドキュメンタリーというよりも、「金と時間をかけた壮大なプロモーション」のように感じられてならないのである。

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