宇都宮徹壱ウェブマガジン

「変な外国人」に仕立てられたハリルホジッチ 監督解任報道に見るメディアの危機<1/2>

 ヴァイッド・ハリルホジッチ前監督の突然の解任から、早いもので1カ月以上が経過した。今月18日には壮行試合となるガーナ戦のメンバー発表が行われ、31日にはワールドカップ・ロシア大会に出場する23人が決まる。その頃は、メディアも「西野ジャパン」一色となり、ハリルホジッチ氏について語れる機会は(少なくとも本大会前は)、これが最後となろう。

 解任の是非については、すでにあちこちで書いているので、ここで繰り返すことはしない。今回、当WMで問題提起したいのは「なぜ解任以降、ハリルホジッチをめぐる報道にネガティブなものばかりになったのか?」ということである。ハリルホジッチ氏が再来日した際、通訳が感極まった場面を捉えて笑いのネタにするバラエティ番組があった。さすがにそれは論外としても、4月27日の同氏の会見に関する報道についても「恨み節」とか「私への敬意がない」といった見出しが踊り、TVニュースでも「感情的で言い訳がましい外国人」という見せ方の映像が目についた。

 百歩譲ってJFAへの多少の「忖度」は認めるとしても、だからといって前監督を「変な外国人」であるような印象操作を行い、それらをもって「解任はやむなし」とする一連の流れには、いちサッカーファンとしても、そしてひとりの人間としても度し難いものを覚える。ハリルホジッチ氏の手腕を議論するならともかく、ワールドカップ予選を突破した恩義を忘れて、「もう監督ではないのだから」とか「外国人だから」という理由だけで彼を叩くのであれば、非常に絶望的な事態であると言わざるを得ない。

 今回、ゲストにお招きした樋渡類(ひわたし・るい)さんは、ハリルホジッチ氏が代表監督だったときに通訳を務めた、樋渡群氏の実兄である。彼は「通訳の兄」として、実名と素顔を晒しながら「ハリルホジッチ氏の名誉回復のために」メディアの歪んだ報道を正そうと発信し続けてきた(参照)。類さんはサッカー経験者ではあるが、専門家でもなければジャーナリストでもない。あくまでも「ハリルホジッチさんの日本での友人のひとり」としてメディアに登場し、勇気ある発言を行ってきた。

 これまで2つのTV番組に出演してきた類さんだが、どんなに言葉を費やしても使用されるコメントはほんのごく一部。こんな時こそ、当WMのような個人メディアの出番である。世の中が「西野ジャパン一色」になる前に(そうなるかどうかは微妙だが)、前監督の名誉回復を切に願う「通訳の兄」の言葉に、ぜひとも耳を傾けてほしい。(取材日:2018年5月2日@東京)

<目次>

*田嶋会長の会見に「何かを隠しているような印象」

*内定を蹴ってフランスでのコーチ修行に向かった弟

*「『通訳日記』だけは書いてくれるな」と釘を刺され

*ハリルホジッチ氏との再会で涙を流した本当の理由

*解任報道をめぐる地上波とネットメディアの温度差

*日本は「情報リテラシー」の科目を義務付けるべき

田嶋会長の会見に「何かを隠しているような印象」

──さっそくですが、類さんが「ハリルホジッチ解任」について、最初に情報を掴んだタイミングはいつだったんでしょうか?

樋渡 解任会見前日の4月8日の夜でしたね。「去就に関する会見」というテロップがTVに出たとかで、twitterでその話題が拡散していることにまず気付きました。デイリー(スポーツ)さんもYahoo!ニュースで「解任」とはっきり書いていたので、すぐに弟にLINEで確認したんです。そうしたら30分後に「解任」という答えが返ってきましたね。

──いつもは、弟さんとは頻繁には連絡をとっていなかったそうですが。

樋渡 そうです。弟も話せることは限られているだろうし、私が聞きたいこともミーハーなことばかりなので(苦笑)、頻繁には連絡しないようにしていました。

──今回、田嶋(幸三)会長とハリルホジッチさんは、パリで会って話をしているわけですが、そこには弟さんは同席してないわけですよね。別の通訳を連れていったと?

樋渡 代表チームとして弟も帯同する時以外は、欧州在住でJFAに太いパイプを持っている方が、現地で通訳を手配していたという話は弟から聞いていました。ですから彼も、そこで解任という話になっていたとは、まったく知らなかったわけです。夜の10時にJFAの上司にあたる人から電話があって、「オレも今知ったんだよ」みたいなやりとりがあったようです。ですから彼らも、報道が出る少し前に(ハリルホジッチ解任を)知らされたようですね。

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