宇都宮徹壱ウェブマガジン

「変な外国人」に仕立てられたハリルホジッチ 監督解任報道に見るメディアの危機<2/2>

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■ハリルホジッチ氏との再会で涙を流した本当の理由

──固い絆で結ばれていたハリルホジッチさんと樋渡ファミリーですが、その別れというものは、どのようなものだったのでしょうか?

樋渡 ため息をつきながら、ハリルホジッチさんがおっしゃっていたのが「JFAは自分の首を絞めているんじゃないか」とか「(この決定は)絶対に日本サッカーのために良くない」ということでした。日本サッカーとファンのことを思うと、本当に憤懣やるかたない思いだったようです。

──まあ、そうでしょうね。

樋渡 だけど「ハリルホジッチさんはやっぱり優しいな」と思ったのが、私の子供たちにはこう言ってくれたんですよ。「人生はどう転ぶか、まったくわからない。君らが大人になった頃には、日本サッカーがすごく良くなっている可能性も十分にある。今はしっかりとサッカーを楽しんでほしい」。その上で「勉強もきちんとやらないとダメだよ」って付け加えてくれました。「私はサッカーも勉強も、両方よくできたんだぞ」とも言っていましたね(笑)。

──それにしても解任発表以降、TVや新聞などの大手メディアは総じて、ハリルホジッチさんのことを「激しやすい変な外国人」という感じで報じていますよね。確かに頑固だし、時に感情的にまくしたてることもありますけれど、ずっと取材をしている人間からすると、極端な一面だけが強調されていることに違和感を覚えます。考えてみれば、日本でTVを見ている人たちにしてみれば、「激高している外国人」ってトランプ大統領しか知らないと思うんですよ(笑)。CNNやBBCでも見ていない限り。

樋渡 本当にそう思います。直に接してきた者としては、ボスニアからもフランスからも受勲されるような立派な人格者である一面も、もっと報じてほしいんです。

──ですよね。もちろん、日本のTVでも外国人タレントはたくさん出ていますけど、彼らは基本的に「日本のメディアに最適化された外国人」で、だからこそお茶の間に受け入れられる。でも、ハリルホジッチさんはそうではないですよね。だからこそ、ボスニアが世界に誇る名将は、日本のTVタレントにいじられる。彼が再来日した時、弟さんが感極まったことをフジテレビの『バイキング』が笑いのネタにしましたが、類さんはあの番組のことをどのタイミングで知りました?

樋渡 twitterの拡散で知りました。ですので、番組そのものは(リアルタイムでは)見ていません。ネットに上がっていた動画を見て、確かに不愉快な気分にはなりましたけど、弟の涙を見て面白がっていた人はネットの反応を見る限り、決して多くはなかった。むしろ同情的な意見のほうが多数派だったと認識しています。ついでに言えば、番組で弟を揶揄していた坂上忍とかおぎやはぎについて、悪い感情は抱いていません。彼らは彼らで「TVの世界で生きていくのに一生懸命なんだろうな」とは思いました。むしろ、なぜ彼らがそうした伝え方をしたのか、そっちのほうが気になりましたね。

──弟さんから、涙の理由について聞いていると思うのですが、いかがでしょうか。

樋渡 悲しいとか、残念とか、このやり方はないんじゃないかとか、いろいろな気持ちがあったと思います。ただ、それ以上に彼にとってショックだったのが、久しぶりに会ったハリルホジッチさんがとても痩せていたことだったんですね。精神的に、かなり追い込まれていたのは明らかでした。そこで思わず涙がこぼれそうになったんだけど、メディアに利用されまいと、そこでは堪えていたそうです。実はその日は、ハリルホジッチさんを出迎えに行くのが彼の仕事で、囲み取材の予定はなかったそうです。

──え、そうだったんですか?

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