宇都宮徹壱ウェブマガジン

「島のフットボール」としての沖縄 7年ぶりの訪沖で感じた独自の文化

 業界内がワールドカップモード(あるいは日本代表モード)に突入する5月最後の週末、その流れに逆らうように沖縄に行ってきた。もちろん、バカンスではなく取材。沖縄に行くのは、08年の石垣島での地域決勝(FC町田ゼルビア、V・ファーレン長崎、ホンダロックSCが昇格)、そして11年のJFL取材(FC琉球対松本山雅FC)に続いて、7年ぶり3回目のことであった。今回は天皇杯1回戦の取材。試合内容についてはこちらに書いたとおりだが、本稿では現地で感じた「島のフットボール」としての沖縄について。短い滞在期間で感じたことを記しておくことにしたい。

「島のフットボール」といえば、拙著『フットボールの犬』では、フェロー諸島やシチリアやマルタを取り上げていたし、最近でもグアムハワイを取材している。そう、私にとって「島のフットボール」とは、いずれ一冊の書籍にまとめたいくらい重要かつ普遍的なテーマなのである。まずは沖縄の基本データから確認しておこう。沖縄本島の総面積は1207平方キロメートル。主要4島(北海道、本州、四国、九州)と北方領土を除くと、わが国最大の島である。そこに、県全体の9割にあたる138万人が暮らしている。

 少なくとも総面積と人口だけで見れば、沖縄に「島のフットボール」が根付くだけのポテンシャルは十分にあると言えよう。それは、UEFA加盟国でもあるマルタと比較するとわかりやすい。マルタの総面積は316平方キロで沖縄の4分の1。人口は約3分の1の41万人しかいない。にもかかわらず、この小さな島国には14チームによるプレミアリーグが存在し、さらにその下には1部、2部、3部リーグが粛々と運営されている。今から13年前、私はマルタ・プレミアリーグを取材しているが、外国人選手も多くプレーしており、レベル的にはJ2上位チームと同じくらいであったと認識している。

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