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【無料公開】蹴球本序評『砕かれたハリルホジッチ・プラン 日本サッカーにビジョンはあるか』五百蔵容著

 シナリオライター、プランナー、そして最近ではサッカー分析家としても注目されている五百蔵容(いほろい・ただし)さんのデビュー作。本書は当初、ワールドカップ・ロシア大会に臨む日本代表の戦術ガイドブック、というコンセプトでスタートしたと思われる。しかし4月7日のヴァイッド・ハリルホジッチ監督の電撃解任により、すべてがひっくり返ってしまった。結果として本書には、新たな使命が宿ることとなる。「はじめに」から引用しよう。

 ハリルホジッチのチーム作りは、当初から激しい賛否両論に晒されてきました。(中略)こうした毀誉褒貶の激しくなる傾向は最後まで変わらず、そのこと自体がJFAの不信を招いたのではないかと思われる形跡もあります。

 ですが、ハリルホジッチ解任の理由や是非そのものは、本書では問いません。ハリルホジッチの仕事を正面から分析・総括し、後代の戦略的・戦術的検証や知見の積み上げに寄与する。そのような議論を一般向けにまとめあげる。それが本書の目的です。

 いかがであろうか。ひとりの代表監督の仕事を《正面から分析・総括し、後代の戦略的・戦術的検証や知見の積み上げに寄与する。》という決意表明は、これまで私を含む同業者がなかなかできなかったことだ。またこうした企画が、代表監督の任期終了後では非常に成立しにくいという、出版業界の事情も無視できない。前監督の突然の解任は今でも残念でならないが、結果としてこのような意欲的な取り組みが脚光を浴び、発売後すぐに増刷となったことについては素直に喜びたい。

 本書ではハーフスペースと5レーン理論の紹介から始まり、続いて「ハリルホジッチ・プラン」の真骨頂と言える4年前のドイツ戦を緻密に分析してから、日本での3年間の仕事をさまざまな視点から検証している。現代のサッカー戦術の入門書としても非常に価値が高い。今回のワールドカップで日本代表がどんな結果に終わっても、JFA(の現体制)はハリルホジッチ時代の3年間を「なかったこと」で済ませるだろう。その意味でも、本書の存在は貴重だ。定価980円+税。

 ところで私は、日本代表の事前合宿とワールドカップ取材のため、6月4日に日本を発つ。どの書籍を持っていくべきか、こうした長丁場の取材ではいつも悩ましいところだが、本書は「忖度なし」でのメンバー入りが決まった。現地では日本代表の試合ごとに、ページをめくりながら「答え合わせ」をしていくことにしたい。というわけで、行ってきます!

【引き続き読みたい度】☆☆☆☆☆

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