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宇都宮徹壱ウェブマガジン

「結果を出せば、世論はひっくり返るんですよね」 ワールドカップ総括対談(清水英斗&宇都宮徹壱)<1/2>

 今週は、同業者の清水英斗さんとのワールドカップ総括対談をお送りする。ロシアでのフットボールの祭典を振り返る企画は、このコンテンツでいったん一区切り。今回の対談は、準決勝が終わった7月12日に行われた。テーマは大きく2つ。大会全般を通しての総括、そして今大会における日本代表の総括である。

 対談が行われた時点では、優勝チームがどこになるのか、次の日本代表監督が誰になるのか、もちろん判明していない。が、3週間が経過して読み返してみると、結果に符合するところが多く、非常に深みのある対談となった。これ以上の前口上は必要ないだろう。最後までお読みいただければ幸いである。(2018年7月12日@モスクワ)

<目次>

*ベスト4に進出したチームの共通点は「一体感」

*戦術的なトレンドは見られなかったけれど

*VAR導入が「大成功だった」と考える理由

*川島の不調はハリルホジッチ解任の影響か?

*不自然な選手選考は「不満分子排除」の結果?

*もうこれっきりにしてほしい「結果オーライ」

■ベスト4に進出したチームの共通点は「一体感」

──今日はよろしくお願いします。今大会も残すは3位決定戦と決勝のみとなりましたが、清水さんにとって今大会はどんなワールドカップだったでしょうか?

清水 こんなにしっかりと黒字になる大会は初めてですね(笑)。仕事が多かったというよりも、経費が予想以上に安く済んだので。前回のブラジル大会は、とにかく経費がかかりすぎて、頑張ってようやく(収支が)トントンという感じですけど、今回は無料列車を利用したことで、わりと早い段階で黒字が見えました。

──あれは有難かったですね。コスト面以外でも、今大会は非常にストレスの少ない大会だったと思います。交通にしても治安にしても、あとボランティアも優秀だったし。

清水 ロシアはもともと社会主義国で、そういう国でやる国際大会って国の威信が懸かっているので、基本ハズレはないですよ。実際、北京五輪もそうでしたし。ただボランティアに関しては、みんな親切なんですけど、自分でわからないことがあると「ちょっと待ってください」といって一生懸命スマホで調べようとするんですよね。熱意はありがたいけど、自分で調べたほうが速いって思うことは何度かありました(笑)。間違いなく過去の大会に比べて優秀で豊富なボランティアでしたけど、スマホがどんどん便利になる中で、彼らに頼るシチュエーション自体が減ったなあと、妙な寂しさも感じました。

──これまでロシアを訪れると、言葉が通じないのが一番のストレスでしたが、ボランティアを含めて最近のロシアの若者はけっこう英語を話せる人が多くて、そこに私は時代の変化を感じましたね。彼らは、ソ連時代どころか貧しかった時代のロシアも知らない。親たちの世代とは明らかに異なる、新しいロシア人たちと触れ合うことができたという意味でも、今大会は貴重な経験となりました。

清水 逆に年配の人と話すと「英語は話したくない」っていう雰囲気がすごく感じられますよね。「アイ・キャント・スピーク・イングリッシュ」って言ってくるけど、しゃべってるやん! みたいな(笑)。でも確かに、今のロシアの若者たちからは、その上の世代とはまったく違う感覚みたいなものを僕も感じました。

 ただ、やっぱりみんな自分の国が基本的に大好きなんですよ。自分の国をよく思ってほしいから、それで外国人に親切にしていた部分は絶対にあったと思うんですよね。それは12年前のドイツ大会でも感じました。当時、僕はフランクフルトで暮らしていましたけど、「こいつらワールドカップの間だけ、猫かぶりだな」って(笑)。

──なるほど(笑)。

清水 でも、それもまたワールドカップなんだと思います。道を歩いている外国人に「何か困ってますか?」なんて声かけを、普段なら絶対しないかもしれないけど、そんなことも何となくやってみたくなるのが、ワールドカップの魔力というか。お祭りなんでしょうね。

──そろそろ本題に入ることにしましょう。今大会のベスト4は、フランス、ベルギー、クロアチア、イングランドでした。欧州での大会だから欧州勢が強かったのは当然として、ここにドイツやスペインやブラジルがいないのは、やっぱり意外だったと思います。この4強の顔ぶれから、何か思い当たることはありますか?

清水 僕が思うに、単純に一体感のないチームはさっさと負けているという印象ですね。前回王者のドイツは、エジルがトルコの大統領と面会していたことが問題になって、チーム内がゴタゴタしていたじゃないですか。スペインだって、大会前日に監督が交代したし。今のサッカーって、戦術で語られることが多いですけど、大前提として「チームに一体感あること」というのが絶対にあると思うんですよ。

──ワールドカップは短期決戦だから、特にそうですよね。

清水 選手がエゴイストになることも少なくないけど、それでもやっぱり自分より上位にチームがないと、絶対に上に進むことはできない。だからこそ、ベスト4に残ったクロアチアにしてもイングランドにしても、チームとしての一体感がものすごく感じられましたね。日本がグループステージを突破できたのも、やっぱりそこだったと思っています。

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