宇都宮徹壱ウェブマガジン

【無料公開】愚直かつ粛々としたスタイルの追求(2018年10月27日@埼スタ)

 10月最後の土曜日は、YBCルヴァンカップ決勝の取材で埼玉スタジアムへ。これが初のファイナル進出となる湘南ベルマーレと、17年ぶりのリーグカップ制覇を目指す横浜F・マリノスによる、神奈川勢同士の顔合わせとなった。

 試合後の会見でチョウ監督は「湘南スタイル」について、「縦に速いと言われていますが見ている人にわかりやすいことが大事」と語っている。攻撃面ばかりクローズアップされる傾向があるが、この試合で顕著だった身体を張った粘り強い守備、そして若い選手が臆せずチャレンジする姿勢もまた「湘南スタイル」の発露であると私は理解している。

 クラブのスタイルというものは、もちろん一朝一夕に出来上がるものではない。その起点となったのが反町康治前監督が就任した09年であり、ヘッドコーチだったチョウ監督が引き継いだ10年間の集大成が今回のタイトル獲得だったと言える。その間、湘南は3回のJ2降格を経験しているが、それでも独自のスタイルを追求する姿勢にブレはなかった。

 愚直かつ粛々としたスタイルの追求──。言葉にするのは簡単だが、決して容易なことではない。その意味でも、湘南のルヴァンカップ優勝は意義深く、そして重い意味を持つ。

<この稿、了>

« 次の記事
前の記事 »

ページ先頭へ