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【無料公開】函館に集う4チームへの思い いよいよ開幕!地域CL1次ラウンド展望

 今年もこの季節がやってきた。日本サッカー界で最も過酷、かつ観る者の心を揺さぶる大会、全国地域サッカーチャンピオンズリーグ(地域CL)。今大会の1次ラウンドは、11月9日から11日まで、函館(Aグループ)、岐阜(Bグループ)、松江(Cグループ)の3会場で開催される。開幕前日の8日の午後、空路で函館に到着。天気は晴れで日中の気温は15度と、それほど寒さは感じない。ただし明日の予報は雨なので、雨具と防寒は抜かり無く準備しなければなるまい。

 実は組み合わせが決まる以前から、私は1次ラウンドは函館に行くことを決めていた。理由はもちろんロケーション。北海道で地域CLが行われるのは初めてだそうだし、これを逃すと今後10年はこうした機会はないだろう。札幌には取材で何度も訪れているが、函館は社会人になりたての頃に旅行で訪れたのが最初で最後。四半世紀ぶりの再訪に、何かしら期するものもあった。加えて2カ月前、札幌での日本代表の試合が地震で中止になり、現地に行けなかったことも理由のひとつとなっている。

 そんなわけで今回は、函館という土地の風物を楽しみながら、地域CLの激闘をレポートすることにしたい。今大会の一番のトピックスといえば、PK戦が廃止となったことに尽きるだろう。地域CLでは引き分けの場合、延長戦なしのPK戦が行われ、勝者には勝ち点2が、敗者には1が与えられてきた。過去には3試合引き分けのPK勝ちで6ポイントを積み重ね、そのまま昇格したチームもあったわけだが、PK戦が廃止されると勝ち点3にしかならない。このルール変更が、大会にどのような影響を及ぼすかについては、非常に気になるところだ。

 さて先に予告したとおり、今大会は試合当日の夜に、フォトギャラリー形式で大会のレポートをアップしていく。ここ数年で知名度が上がったとはいえ、地域CLがマイナーな大会であることに変わりはない。さほど需要があるとは思えないが、一方で熱心なファンも一定数いるので、当WMが少しでもお役に立てればと考える次第だ。基本的には19時のアップを予定しているが、何らかのアクシデントがあった場合はTwitterで告知させていただく。最後に、この函館会場に集う4チームについて、個人的な思いを記すことにしたい。

 FC刈谷は、この1次ラウンド1位抜けの本命である。東海リーグでは、鈴鹿アンリミテッドFCとのデッドヒートに敗れて2位となったが、茨城での全社で準優勝して地域CLの出場権を獲得。組み合わせにも恵まれたので、3大会ぶりの決勝ラウンド進出は固いだろう。もともと実力も実績もあるチームだが、今季からブラジル人のビラ・ヴェイガ監督が指揮を執るようになり、プレーに良い意味での「色気」が感じられるようになった。サポーターの賑やかな応援も含めて、函館でどんな試合を見せてくれるのか楽しみだ。

 高知ユナイテッドSCは、昨年に続いて四国チャンピオンとして挑む。FC今治が抜けた四国リーグでは、ほぼ向かうところ敵なしの状態ではあったが、全国とのレベルの差はいかんともし難いところ。それでも、今回は組み合わせには恵まれているので、初の決勝ラウンド進出も夢ではないだろう。昨シーズン、西村昭宏前監督(現スーパーバイザー)から指揮を引き継いだ大谷武文監督は、メキシコ、エルサルバドル、クロアチアでのプレー経験があるとのこと。その采配にも注目したい。

 東北王者のブランデュー弘前FCは、まったく未見のチームながら個人的な思い出がある。2年前のJFLで、ラインメール青森とヴァンラーレ八戸のダービーを取材したのだが、この時の会場が弘前。そこで出会った弘前の関係者の忸怩たる思いを聞いて、青森県内における地域対立の構図を再認識した。チームを率いるのは、鹿島アントラーズで活躍した内藤就行監督。選手リストを見ると、栃木SCから荒井秀賀、早乙女達海など、いずれも19歳の若手4人を期限付きで獲得しているのが気になった。どんなつながりがあるのだろうか。

 そして、これら3チームを函館で迎え撃つのが、北海道十勝スカイアース。かつて『とかちフェアスカイ・ジェネシス』というクラブ名だった07年に『股旅フットボール』で取材しているので、実に11年ぶりの再会となる。その後、道東ブロックに降格したものの、11年から再び北海道リーグに昇格し、安定して上位をキープしている。もっとも近年の北海道リーグは弱体化が著しく、チャンピオンチームは地域CLで草刈場となっているのが実情。北海道開催となる今大会、ぜひとも「地元」の意地を見せてほしいものだ。

 そんなわけで明日から始まる地域CL1次ラウンド。ここ函館から新鮮かつビビッドな情報をお届けするので、何卒ご期待いただきたい。

<この稿、了>

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