宇都宮徹壱ウェブマガジン

蹴AKE11は何によって支えられているのか? 地域リーグを網羅する謎のメディアに迫る<1/2>

 日本のサッカーシーンが上から下まで佳境に入る中、地域リーグからJFLを目指す戦いもいよいよクライマックスを迎える。先に行われた地域CL(全国地域サッカーチャンピオンズリーグ)1次ラウンドを勝ち抜いた4チームは、千葉県のゼットエーオリプリスタジアムに集結。11月21日から25日にかけて決勝ラウンドを戦う。

 そんなわけで当WMも今月は地域CL一色となっているが、今週は『蹴AKE11 ~シュウアケ イレブン~』というインターネットサッカー情報番組を取り上げることにしたい。この蹴AKE、地域リーグ界隈ではすでに有名になっている番組で、スタートしたのは今年の3月末。毎週月曜日、地域リーグの情報をマニアックに発信している。

 私が蹴AKEの存在を知ったのは、先に茨城で開催された全社(全国社会人サッカー選手権大会)。例年、私のような物好きしか取材に来ないアマチュアの大会に、今年はビブスを付けた取材者が何人も来ていて驚かされた。しかもよく見ると、地域リーグのイベントや試合会場でお見かけする人たちばかり。実は彼らこそ、蹴AKEの制作部隊だったのである。

 この謎めいたメディアを主催しているのが、錦糸町フットボール義勇軍(以下、KFG)のオットナー参謀長。かのロック総統の有能なブレインとして知られる人物だ。なぜ参謀長は、かようにマニアックな番組を立ち上げたのだろうか。話を聞いてみると、そこにはJFL以下のカテゴリーが抱える根深い問題が見えてくる。アンダーカテゴリー好きには必読のインタビュー。最後までお付き合いいただければ幸いである。(取材日:2018年11月2日@東京)

<目次>

*「観て楽しむ」側から自分たちが「発信する」側へ

*2017年の「DAZN元年」でJFLが抱いた危機感

*JFLの試合を中継するにはいくらかかるのか?

*J1から地域リーグ2部まで「すべて見せます!」

*栃木ウーヴァの「あの人」も蹴AKEの大ファン?

*地上波の発信だけではサッカーファンは増えない

■「観て楽しむ」側から自分たちが「発信する」側へ

──さっそくですが、まずは今年の全社の話からいきましょうか。大会初日の夜に番組に出させていただいた時に、実は初めて蹴AKE11の存在を知りました。そこで感心したのが、今回の全社のレギュレーション変更をきちんとわかりやすく解説していたこと。つまり、地域CL出場権をすでに獲得している「権利持ち」、全社で出場権を獲得しようとしている「全社懸け」、そして全社で優勝しても地域CLに行けない「権利なし」。それらがきちんと色分けされたトーナメント表が出てきたときには感動しました(笑)。

参謀長 ありがとうございます。古くから全社を見ている人には、蹴AKEがあってもなくても自分で調べると思うんですよ。でも、Jリーグしか見ていなかった人たちにとっては、すごく新鮮な話題だったと思うんですよね。全社って、これまでコアなマニアの間でしか語られてこなかった大会だったわけですが、それが番組を通して興味を持ってくれた方もいたみたいで。実際、ネットでのリアクションを見ても、わりと好印象なものが多かったですね。

──それにしても、今大会での蹴AKEの取材体制がすごかったですよね。1回戦は8つの会場で開催されたわけじゃないですか。全会場にスタッフを配置していたんですか?

参謀長 高松(緑地多目的競技場)以外の7会場ですね。1回戦と2回戦は土日だったので、スタッフも6人揃えることができました。ひたちなかは、陸上競技場と人工芝のピッチが2面だったので、何とかカバーすることができましたね。

──蹴AKE自体が、今年の3月末からのスタートで、言ってみればこの全社が初めて体験する大きな大会だったわけですよね。しかも全員にカメラ機材を持たせて、インタビュー取材して、編集までもやって、その日のうちにOAしたというのはすごいことだと思いました。ところでスタッフには、ギャラは出ていたんでしょうか?

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