宇都宮徹壱ウェブマガジン

森保スタイルは「ジャパンズ・ウェイ」なのか? 後藤健生✕中野和也✕宇都宮徹壱<3/4>

 12月26日、来年1月5日に開幕するアジアカップに向けた、森保一監督率いる日本代表のトレーニングがスタートした。年内は5日間、国内トレーニングを行い、30日にいったん解散。年が明けた1月2日に再集合して開催国であるUAEに向けて出発し、9日に初戦となるトルクメニスタン戦に臨む。アジアカップへの注目と期待が高まる中、当WMのコンテンツはこれが年内最後となる。

 先週に続いて今週も、10月17日(ウルグアイ戦の翌日)に行われたWMイベント「徹底討論! 森保一とジャパンズ・ウェイ」の模様をお届けする。登壇者は、サッカージャーナリストの後藤健生さん、そして紫熊倶楽部編集長の中野和也さん。取材歴の長いおふたりとのクロストークから、現日本代表監督の現役時代、そして指導者としての修行時代を経て、サンフレッチェ広島の監督に就任するまでの足跡を明らかにした。

 今週はいよいよ、日本代表を率いることになってからの森保監督にフォーカスする。なぜA代表では3バックではなく4バックを用いるのか。なぜ青山敏弘を重用するのか。五輪代表との兼任はどうなのか。さらに今の日本代表はJFAが提唱する「ジャパンズ・ウェイ」に合致しているのか、などなど。大御所おふたりによる切れ味鋭いトークと、長年の取材で培ってきた豊かな見識を最後までお楽しみいただければ幸いである。

<目次>

*日本代表監督の任期4年は長すぎる?

*代表でも青山を「外せない」理由

*実は「森保っぽくない」今の代表

*なぜ今さら「ジャパンズ・ウェイ」?

*五輪代表とA代表監督兼任の是非

*森保監督から本音を引き出すには?

日本代表監督の任期4年は長すぎる?

──12年に古巣の広島で、初めてトップチームの監督に就任した森保さんは、最初のシーズンで優勝を経験。その後も13年、15年と優勝を果たし、名実共に「日本を代表する指導者」のひとりになっていきます。ところが16年は6位に終わってタイトルはなし。続く17年はチームがさらに低迷して、シーズン途中で解任されることになります。チームが上手くいかなくなった要因は、いろいろあると思うのですが、中野さんは何が一番だったと考えますか?

中野 監督就任から6年目ということで、長期政権の難しさが出たのかもしれないですね。加えて、15年の優勝の立役者だったドウグラスが中東のクラブに引き抜かれ、代わりに入ったピーター・ウタカは16年の得点王になりましたけれども、当人の意向もあって移籍。浅野拓磨にエースの期待をかけていたんですけど、結果を出す前にヨーロッパに移籍。代わりに工藤壮人を獲得したけれど、なかなかゴールが生まれない。そうこうするうちに、青山と森崎カズ(和幸)の離脱が重なるという不運もあったんですね。

──なるほど。広島での森保さんのラストゲームは、浦和戦でしたっけ?

中野 そうです。最初は立て続けに2失点して、その後3点取ってひっくり返したんですね。それまでの森保さんだったら、絶対に逃げ切れたはずだったんです。ところが選手が動けなくなってしまって、打つ手もことごとく後手に回ってしまって、最後はズラタンと関根貴大のゴールで34で敗れてしまいます。その翌週くらいに、森保さんの退任が発表されたんですよね。

──「長期政権の難しさ」という点については、後藤さんいかがでしょう?

後藤 同じ監督、同じ選手で同じことをやっていたら、だんだん飽きてくるし緩んでもくるよね。「それが怖いから3年で辞めるんだ」って、岡田武史も札幌の監督時代に言っていました。6年というのは、相当長いですよ。それ以上、長くやるんだったら、選手を入れ替えるしかない。サー・アレックス・ファーガソンが、マンチェスター・ユナイテッドの監督をやっていた時は、まさにそうでしたよね。

中野 そうですね。デイビッド・ベッカムも、クリスティアーノ・ロナウドも、容赦なく放出されていきましたからね。

後藤 それに加えてファーガソンの場合、カルロス・ケイロスみたいなコーチが戦術面を担当していたから、そこの部分を変えていくという手もあった。だから監督は同じなんだけど、選手や戦術を変えることでマンネリを避けるやり方は、あるにはあるわけです。

──日本代表の場合、4年の任期というのがスタンダードになっていましたけれど、後藤さんはそれも長いと思いますか?

後藤 代表でも4年は長いと思う。アルベルト・ザッケローニの時も、フィリップ・トルシエの時も、最後のほうはマンネリ感が漂ってきていて、これ以上に手を入れる必要がない、あるいは手を入れるだけの引き出しがないという感じでしたよね。トルシエで言えば01年のイタリア戦、ザッケローニでいえば、13年のベルギー・オランダ遠征。いずれもワールドカップ本番の前年に、チームとしてのピークに達してしまった。逆に今大会の西野(朗)とか、南アフリカ大会直前の岡田とか、切羽詰まって時間が足りないほうがいい結果を残しているよね。

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