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【無料公開】国内外のフットボール映画をフェスのように愉しむ 福島成人が語るYFFF2019の見どころ<1/2>

女子ワールドカップ開催国での「女子サッカー事始め」

©Workers Cup LLC, 2017

──というわけで、ここからは上映作品をいくつか紹介していただきましょう。今回は作品数が多いので、私のほうで特に気になった作品を中心にピックアップしていきたいと思います。まずはヨーロッパの作品からいきましょうか。2月17日(日)の13時40分上映の『ワーカーズカップ』。2017年にイギリスで制作された作品ですが、これは22年ワールドカップの開催国であるカタールで取材したドキュメンタリーですね?

福島 そうです。カタール大会に関しては、決まった当初からいろいろ悪評がありましたよね。冬でも暑いとか、あんな小さい国にスタジアムをたくさん作ってどうするんだとか、あとは外国人労働者が奴隷みたいな扱いを受けているとか。

──思えば2006年のドイツ大会以降は、いずれの大会も始まる前は悪評がつきまとっていましたよね。南アフリカ大会は「治安が最悪」、ブラジル大会は「インフラ整備が終わらない上に市民デモで大変なことになっている」、この間のロシア大会だって現地組の皆さんは「楽しかった」と言っていますけど、当初は「テロがあるんじゃないか」とか「ドーピング問題がこじれて開催が危ういんじゃないか」とか、いろいろ言われていました。カタール大会も、個人的には納得できていない部分はありますけれど、結局は何事もなかったように開催されると思います。すみません、余談でした(笑)。

福島 いえいえ(笑)。まあ、そんな開催国カタールについて「実際はどうなんだろう」ということでイギリスの撮影スタッフが現地に潜入して、スタジアム建設に従事する出稼ぎ労働者に密着するんですね。実際のところ、建設現場は過酷です。そこでカタール政府は現場の不満解消のために、労働者チームによる建設会社対抗の(サッカーの)トーナメントを開催するんですね。その大会に関わる人たちを追いかけた作品です。

──なるほど、非常に視点がユニークですね。と同時に、来年に東京五輪を開催する日本にとっても、決して他人事とも思えない話でもありますが。

福島 そうなんですよ。建設現場は劣悪な環境だけに、サッカーが一服の清涼剤になっている。でも、それで問題の根本が解決するわけでもないし、昔ほどスポーツのビッグイベントが純粋でなくなっていることは誰もが知っているわけです。それを承知の上でこの作品を観ると、開催国カタールの違った一面が見えてくるんじゃないですかね。

© Bruno Calvo / Stéphanie Branchu

──続いては、フランスの映画ですね。16日() 13時10分上映の『ピッチの上の女たち』。今年はフランスで女子ワールドカップが開催されるわけですが、これはフランスでの「女子サッカー事始め」というストーリーですね。まさにタイムリーな話題だし、予告編を見るとむちゃくちゃ面白そうです!

福島 舞台は50年前のフランスで、女たらしの新聞記者が主人公。チャリティー企画のために「女子サッカーをやったら話題になるんじゃないか」という軽い気持ちでスタートするんですが、フランスサッカー連盟から「サッカーは男のスポーツ。女子サッカーなんてとんでもない!」と大反対されて、やがてフランス中を巻き込む騒動に発展していくというストーリーです。いちおう実話に基づいた話みたいですよ。

──60年代のフランスといえば、カトリーヌ・ドヌーヴとかブリジッド・バルドーとかが銀幕スターだった時代ですよね。その当時、かの国で女子サッカーが始まって、しかもフランスサッカー連盟から大反対されるというのも初めて知りました。福島さんはこの作品のどんなところに魅力を感じました?

福島 まず、出てくる女の子がかわいい(笑)! それと基本的にコメディタッチなので、エンターテイメントとしてもすごく楽しめる作りになっていますね。半世紀前のフランスの雰囲気もとてもよく出ていました。女子サッカーに関心がある人はもちろん、そうでない人も十分に満足できる内容だと思います。

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