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【無料公開】国内外のフットボール映画をフェスのように愉しむ 福島成人が語るYFFF2019の見どころ<2/2>

中国のTVクルーは日本の高校選手権をどう見たか?

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──ヨーロッパ、ブラジルときて、次はアジアに行きましょうか。ちょうど私もアジアカップを取材中ですので、今回はどんなアジアの作品が上映されるのか、非常に楽しみだったんですよ。まずは16日() 11時25分上映の『足球少年養成 高校選手権チャイニーズレポート』。これは中国の作品ですね?

福島 そうなんですが、これは映画ではなくて中国のTV番組をまとめたもので、向こうから売り込みがありました。中国のTVクルーが去年(18年)の高校選手権を取材したものなんですが、われわれにとってごくごく当たり前の「サッカー界の冬の風物詩」が、彼らからどう見えるのかというのが面白いかなと。

──なるほど、それは非常に面白い視点ですね。同じ東アジアとはいえ、中国には「部活の文化」というのがありませんから。私も7年前、2週間ほど中国のサッカー事情を取材したことがあるんですが、そもそもあの国には「学校体育」という概念すら希薄なんですよね。スポーツは、それこそ五輪でメダルが獲得できそうなエリートがやるものであって、都市部に暮らす普通の子供は勉強と習い事ばかり。一般の子供たちが身体を動かす機会は、非常に限られていると聞きました。

福島 そんな彼らからすると、高校にサッカー部があって、そこでレベルの高いトレーニングが行われて、しかも全国大会があるということ自体が驚きだったと思います。あるいは、サッカー部のOBとかマネージャーとかも、彼らにとっては馴染みのない文化だったみたいですね。

──サッカーに限らず日本の部活動文化って、海外から見たら非常に奇妙に映ると思いますよ。私の友人に、セルビアの少年たちに野球を教えている人がいるんですね。ある教え子がYouTubeで『熱闘甲子園』を見たらしく、「日本の選手はなぜ負けるとロッカールームで大泣きするんですか?」と真顔で聞いてきたそうです(笑)。

福島 なるほど(笑)。いずれにせよ「サッカーと映画で異文化を知る」というのがYFFFのテーマですので、逆に高校選手権という大会から日本という国がどう見えるのか、この作品を通して感じていただきたいですね。ちなみに映像の中には、清水桜が丘高校の大滝(雅良)監督や青森山田高校の黒田(剛)監督も出てきます。タイミング的には、今年の選手権の記憶が鮮明だと思いますので、その意味でも楽しめると思います。

──次は16日() の11時ちょうどに上映される『冷たい汗』。イランの映画ですが、YFFFではこれまでにもイランの作品が上映されていますね

福島 4年前に『オフサイド・ガールズ』を上映しています。あの作品の監督(ジャファール・パナヒ)は、作品の中で体制批判をしたという理由で出国禁止になったそうですが、この『冷たい汗』のソヘイル・ベイラギ監督は、検閲でも問題なく国内で上映されたようです。ただしプロモーションはあまりやらせてもらえなかったそうで、SNSで話題が広がっていったみたいですね。

──内容としては、女子フットサルのイラン代表のキャプテンが主人公で、大会に出場するために出国しようとしたら夫が許さないというストーリーみたいですね。イランにおける女性の社会的地位の低さが、フットボールによってあぶり出されるというのは『オフサイド・ガールズ』に通じるものを感じます。

福島 イスラム諸国における女性の権利については、僕らも報道やSNSで触れる機会はありますけれど、映画っていろんなものが映り込むから情報量がものすごいんですよね。この作品では、向こうの女性が被るヒジャブが重要な意味を持つんですけど、そういったディテールの部分も作品の中から感じ取っていただきたいです。

──ヒジャブといえば、アジアカップに訪れているイランの女性は、普通の格好をしていて肌の露出も多かったので、ちょっと驚きましたね。男女一緒にスタジアムで応援するのも、国内では考えられなかったことです。私自身、イランには何度も訪れているので、その意味でもこの映画は楽しみですね。

福島 さっき『ピッチの上の女たち』を紹介しましたけど、女子サッカーという縦軸から、50年前と現代という時代の違い、そしてフランスとイランという地域の文化の違いというものを考えるきっかけになればと思いますね。

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