サッカーパック『今週の宇都宮徹壱おすすめ3本』

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日本人アスリートはなぜ「団体闘争」が苦手なのか? 河内一馬と考える『芸術としてのサッカー論』<1/2>

 今週は、昨年12月19日に開催されたWMイベント「河内一馬と考える『芸術としてのサッカー論』 アルゼンチンから発信することで得られたもの」の模様をお送りする。ゲストは、アルゼンチンで指導者ライセンスの取得を目指している河内一馬さん。当WMの読者にとっては、noteから定期的に発信している『芸術としてのサッカー論』の筆者、と言ったほうが通りはいいかもしれない。

 人材の固定化と高齢化が顕著な、近年のサッカーライティングの世界。それでも最近は、職業ライターとは少し距離を置いたポジションから、平成生まれの才長けた書き手が何人か登場して話題を集めている。河内さんもそのひとりだが、他の書き手との一番の違いは「戦術以外の考察」が多く、しかも優れた論考をコンスタントに発信していることである。以下のnoteでのサブタイトルを見れば、それは明らかであろう。

強いからかっこいいのか、かっこいいから強いのか――。 “弱い”と”ダサい”の因果関係

Jリーグが必ずハマる”罠”――。 スポンサーの獲得は「正義」か「悪」か

なぜ 「会いに行けるサッカー選手」 はダメなのか? エンタメの副作用と錯覚

 もちろん、これらの論考すべてに賛同するわけではない。それでも選手や戦術に寄りすぎることなく、こうした魅力的な考察を冷静かつわかりやすい筆致で発信する20代の書き手の登場は、それなりにこの業界が長い私にとって純粋な驚きであった。そこで河内さんの帰国のタイミングに合わせて、今回のイベントを企画することとなった次第。本稿ではまず、謎に包まれた河内さんのバックグラウンドを探り、その上で『芸術としてのサッカー論』というタイトルに込められたメッセージを深掘りしていく。

 なお河内さんには以前、noteに関する座談会にskypeで参加していただいている(参照)。このときのメンバーである『malicia web』石井和裕さん(写真左)、そして作家の中村慎太郎さん(同右)にも、イベントの後半から参加していただいた。引き出しの多いおふたりゆえに、その後のトークは思わぬ広がりを見せていく。最後までお楽しみいただければ幸いである。(収録:2018年12月19日@東京)

<目次>

*FC東京の下部組織でプロを断念して新潟へ

*なぜ留学先にアルゼンチンを選んだのか?

*「団体闘争」でメダルがなかったリオ五輪

*すぐに怒る欧米人と感情表現が苦手な日本人

*なでしこが「団体闘争」で結果を出した理由

*「観戦マナー」と「サポーターの作法」の違い

■FC東京の下部組織でプロを断念して新潟へ

──今日はよろしくお願いします。河内さんは1992年生まれ。平成生まれですよね?

河内 そうです。平成4年ですね。

──ちょうどその年、私は今の河内さんと同じ26歳で、大学院を出て社会人1年目でした。つまりふた回り以上も世代が離れているんですが、実はわれわれの実家が非常に近くて小学校と中学校が同じ。しかも同じ小学校のサッカークラブに在籍していたんですよね!

河内 練馬区立中村西小学校の「バーバリアン」ですね。

──そう! 私はクラブができたばかりの2期生で、1年後輩のFさんという人は今も地元で指導しているんですが、河内さんはFさんからサッカーを教わったんですよね。それを知ったときは、もうびっくりして(笑)。

河内 僕はFコーチから宇都宮さんの名前は聞いていたので、いずれどこかでお会いできると思っていました。

──こうしてイベントでご一緒できたのも、ですから非常に感慨深いです。本題に入る前に、もう少し河内さんのバックグラウンドを探っていきたいのですが、中学時代はFC東京の下部組織でプレーしていたそうですね。

河内 はい、FC東京U-15むさしですね。むさしは創設からまだ2年で、(FC東京U-15)深川も当時は18人くらいだったと思います。その頃、深川には武藤嘉紀くんがいて同期でした。

──日本代表の武藤選手が同期でしたか! 相当にレベルが高かったんでしょうね。

河内 当時の武藤くんは、周りより少し上手だなっていうくらいでしたが、ものすごく努力家という感じでしたね。それでも、あそこまでのキャリアに上り詰めるとは思いませんでした。僕はDFだったんですが、なかなか試合に出られなくて「自分はプロとして生きていくのは無理だな」って、すでにその時に思いました。

──河内さんは結局、18歳でプレーヤーを続けることを断念するわけですが、高校卒業後はどうされたのでしょうか?

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