宇都宮徹壱ウェブマガジン

わが平成史 写真とフットボールを巡って ブラジルでの蹉跌と老いへの恐れ(平成26年/2014年)

 早いもので、昨年10月からスタートした当連載も、本稿を含めて残り2回となった。執筆しているのは、平成最後の日の4月30日。掲載されるのは、令和に改元された5月2日。原稿が元号をまたぐというのも、何とも不思議な気分である。今は旅先の京都に滞在しているのだが、SNSを眺めるとタイムラインは「平成最後の日」で塗りつぶされていて、いささか居心地の悪さを覚えてしまった。日常の喧騒から離れるのは良い判断であったが、旅のさなかに平成時代の辛い記憶を文章化するのはやはり気が滅入る。

 思えばこの連載を思い立ったのは、ひとつの時代が終わる前に、自分の仕事をきちんと振り返っておく必要性を強く感じていたからだ。このところ、日本代表やJリーグの歩みを「平成史」として振り返るコンテンツを多く見かける。私自身にとっても、写真という表現に目覚め、サッカーを生業とするようになったのも、まさに平成という時代の中で起こったことだ。ゆえに平成という時代には昭和とはまた違った強い思い入れがあるし、だからこそ平成時代に積み残したことは平成が終わるまでに決着をつけておきたい。

「積み残したこと」とは何か? それはおいおい語っていくことにして、まずは今回フォーカスする2014年(平成26年)のサッカー界を振り返っておきたい。この年から東京・国立競技場の解体工事が始まり、Jリーグの第5代チェアマンに村井満氏が就任。そして開幕間もないJ1リーグ第2節で、人種差別的なフラッグが掲出されたことが判明して、浦和レッズのホームゲームが無観客試合となるペナルティが下されることとなった。随分と昔のことのように思えて、今につながるさまざまな出来事が、この年を起点としていることに気付かされる。

(残り 2178文字/全文: 2900文字)

ユーザー登録と購読手続が完了するとお読みいただけます。

ウェブマガジンのご案内

日本サッカーの全てがここに。【新登場】タグマ!サッカーパック

会員の方は、ログインしてください。

« 次の記事
前の記事 »

ページ先頭へ