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【無料公開】森保監督「永井は自分の特徴とチームのコンセプトをミックスしてくれた」エルサルバドル戦会見(2019年6月9日@宮城)

<登壇者>

日本代表 森保一監督

森保 まずは今日、ひとめぼれスタジアム宮城で応援してくださったみなさん、そしてメディアを通して応援してくださったファン、サポーターの皆さん、ありがとうございました。

 試合はここ2試合で3バックという、これまでやっていなかったことをチームとしてチャレンジすること。1試合目よりも2試合目のほうが、選手は変わりますがチームとして、さらにいい形に持っていって勝利をつかもうということ。選手たちが、難しいトライだったと思いますが、前向きに粘り強くチャレンジしてくれて、結果に結びつけてくれたと思っています。

 3バックでも4バックでも、速攻を仕掛けるときは速攻を、遅攻になった時にはGKやディフェンスからしっかりビルドアップして前線の攻撃につなげる。2得点ともディフェンスラインからのパスが起点となっていたので、チームこれからも続けていけるようにしたいと思います。

 またゲームの中で、3バックから4バックに変えて、選手には相手との兼ね合いの中、対応力をもってチームとして戦うことを試合前に伝えましたが、選手たちはシステムが変わる中、混乱することなくいいコミュニケーションと意思統一をしながら、無失点に抑えて勝利できたことは良かったと思います。

 われわれ目指すところは、今日の相手のレベルではなく、より高い技術があるところ、より高いインテンシティの戦いの中でも勝っていけるように、さらに目指していきたいと思います。

──3バックの攻撃を改善するために、どういう指示をしたのか。それから永井謙佑が持ち味出したが、大迫勇也不在の中での攻撃の評価は?

森保 1試合も時間を追うごとに、ビルドアップの形は良くなったと思います。前線にディフェンスラインからボールを運ぶ時のポジショニングを、3バックでそのままビルドアップするのと、ボランチが1枚下りてビルドアップして、より幅を使って揺さぶりながら高い位置にボールを運ぶ。そこからセンターバックが、前線のスペースに侵入してくるというのが、1試合目のビデオを見ながら確認して、昨日のトレーニングでも確認して、今日の試合に臨みました。選手たちは、限られた時間の中で、いいイメージをもってトライしてくれたと思っています。

 永井については、彼のチームの中で(持ち味を)生かしてくれればと思います。起点となるプレーも練習からトライしてくれて、いい形から顔を出すという部分。そして彼の最大の特徴である、スピードを生かしてディフェンスラインの背後に飛び出すというところ。自分の特徴とチームのコンセプトをミックスして、整理してくれて試合に臨んでくれたと思います。

──このグループでは、9月の予選までの間、これが最後の試合となる。予定どおり進んだのか。この2試合で、できたこととできなかったことは?

森保 ある程度、今回トライしようとしたことは、選手たちが前向きにチャレンジしてくれて、できたかなと思います。もちろん、3バックをやるという意味ではパーフェクトではないですし、最初の一歩を踏み出したというところだと思いますが、選手たちがいい感覚をもって、ひとつのアクションでできるような戦い方ができたと思っています。

 そしてひとつの形だけでなく、試合の中でシステムを変えることや、われわれが戦う上で想定外が起きたときに修正できるか、臨機応変に柔軟に対応できるかというところで、わざと試合の中でシステムを変えて戦ってもらいました。そういうところも、今後の戦い方に生きてくるのかなと思っています。どれだけできたのか、皆さんの評価にお任せしたいと思いますが、選手たちが今やれるチャレンジでベストを尽くしてくれたと思います。

──久保建英をピッチに送り出した時の指示と、実際のプレーの感想は?

森保 ピッチに送り出すときは、ポジショニングのことを言っただけで、トップ下に入るということ、攻撃で起点となること。20でリードしている状況から入ったので、守備の部分も前線から頑張って欲しいということは伝えました。よく覚えていないですが(笑)、思い切ってプレーしろと。

 プレーの評価ですが、のびのびと自分の特徴を生かしていたと思いますし、周りの選手とも試合の中でのプレー機会は初めてでしたが、スムーズに連携できる彼の技術や賢さが出ていたと思います。

──3バックの場合、ウイングバックのタイプや構成で戦い方が変わってくると思う。今日は攻撃的な選手を使って、守備の時はボールサイドでない選手が下がって4枚で対応する場面が見られた。組み合わせによっての、今後のウイングバックの使い方をどう考えるか。

森保 ウイングバックの選手の特徴を生かして、戦い方のギアを変えることは表現できたと思います。ただし1試合目は、なかなか絵(=共通のイメージ)が持てない中でプレーしてくれたウイングバックの選手が、今日プレーしていればさらに攻撃の部分では高い位置でアプローチする、守備の部分ではスペースをしっかり埋めながらスライドして守備するということは、おそらく誰が出てもできていたかなと思います。

 1試合目と2試合目では、選手が変わって特徴が変わる部分、仕掛ける部分というところでは違うところあるとは思いますが、ポジショニングのところではチームとして、上手く修正・改善してこの2戦はできていたと思います。ひとりひとりの特徴は違いますが、攻撃のときはより高い位置で、守備になったらスペースを埋めてく。誰が出てもポジションでの役割は変わらないと思います。

──コパ・アメリカのチリとの初戦に向けてどのようにチームを作るのか。

森保 まずはチャレンジ精神をもって、チリ戦に臨むこと。チームとして、しっかりやりたいと思います。インテンシティは初戦から相当に高くなると思いますので、戦う覚悟をもってコパ・アメリカのチリ戦に臨むということ。その中で自分たちが学ぶべきものと、学ぶだけでなく「自分たちがどこまでやれるか」というところは思い切りぶつけるように、選手たちには働きかけていきたいと思います。

 コパ・アメリカに参加するということで、キリンチャレンジカップとはメンバーが大幅に変わって臨むことになりますが、われわれが世界の舞台に立って戦うために、アジアでは確実に勝つ、そして世界で勝っていくために、コパ・アメリカで結果を出せるように。自分たちが、どれだけやれるかというところで、少しでも手応えが得られるチャレンジをしていきたいと思います。

──2−0になって久保を投入しやすくなったと思うが、今後どういう成長曲線を描いていくと考えるか。それから震災の被災地である宮城で、勝利を届けることができたことについて。

森保 久保には、これからさらに成長してもらえるように、という部分。今日のA代表でのデビューをきっかけに、新たな刺激が彼自身の成長につながっていければいいと思います。どう成長するかについては、私自身も皆さんと同様に楽しみにしていきたいし、見守っていければと思います。

 われわれはいろんな都道府県で試合をさせていただいています。日本全体ということはもちろんですが、試合を開催していただく会場があるところが、どういうことが歴史的に起こっているのかを考えながら、いろんな発信ができるようにしようということは、この宮城に来たときも選手に話しました。

 11年の東日本大震災で、宮城をはじめとする東北の多くの皆さんが被災されて、日常生活を奪われて心の傷を負っているということ。19年になっても、まだまだ元通りになっているとは言えないと思いますし、これから復興に向けて長い道のりを歩んでいかれると思っています。

 まずは選手やスタッフと共に、日本代表として東日本大震災で被災された方々に寄り添っていきたいということを、あらためてお伝えしていきたいと思います。そして選手たちには、今日のわれわれのプレーを見ていただいて、希望や勇気や元気、そして復興に向けて頑張っていらっしゃる方々に励ましのエールを送れるようにしようと。選手たちが、そういう思いをもって戦ってくれたと思っています。

<この稿、了>

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