宇都宮徹壱ウェブマガジン

日本最大の「Jクラブの空白地」を行く ホンダロックSC & テゲバジャーロ宮崎<2/2>

航空自衛隊の町にフットボール専用スタジアムを

 ダービー翌日の月曜日、ロック総統のツアー2日目に同行させていただくことにした。この日のコースは実に豪華。まず、宮崎市に隣接する新富町にて、来シーズンにオープン予定のテゲバの新スタジアム建設予定地を視察。その後、ホンダロックの選手が働いている工場を見学するというもの。宮崎のサッカー界に顔が利く総統だからこそ実現した、地域サッカーファン垂涎のツアーである。

 その日は午前9時に、宮崎駅前のレンタカー屋に集合。右手に海を眺めながら北上する。途中、シーガイアが見えると、総統の絶妙な解説が入る。いわく「ここは第三セクターでは過去最大となる3261億円もの負債総額を出して、外資に買われていきました。何事も計画通りにいかない、まさに宮崎クオリティの極みでございます」。車中が乾いた笑いに包まれる。テゲバの新スタジアムは、大丈夫だろうか。

 やがて目的地に到着すると、テゲバの広報スタッフと新富町役場の担当者が、われわれの到着を待ち構えていた。役場の担当者は、わざわざテゲバのTシャツを来ている。案内されたのは、県道に面した広大な更地。すでに町が確保したこの土地に、新スタジアムとフットボールパークを建設するという。最寄り駅はJR日向新富町駅。徒歩10分なので、アクセスは申し分ない。

 人口1万6000人の新富町は、戦前には旧陸軍の飛行場が建設され、戦時中は落下傘部隊や特攻隊の基地が置かれた歴史がある。戦後には航空自衛隊新田原基地が設置され、現在はパイロット養成の飛行教育隊と戦術飛行教育の飛行教導隊、領空侵犯などの実任務に従事している301飛行隊、そして遭難者の捜索救難や緊急患者空輸などを行う新田原救難隊の4飛行隊が所在する。いわば航空自衛隊の精鋭たちが、当地に集結しているのである。

 当然、訓練中は凄まじい爆音が周囲に響き渡る。そのため新富町には防衛省から補助金が下り、今回のフットボールパーク建設にも補助金の一部が充てられるそうだ。完成すれば、県のサッカー協会もこちらに移転し、プロの興行とアマチュアの大会が開催される、宮崎サッカーの一大拠点となる。

 一方、新スタジアムについては、まずJ3基準の5000人収容の球技専用スタジアムとしてオープン。その後は、テゲバのカテゴリーが上がるのに合わせて拡張工事を行い、最終的にはJ1基準の1万5000人以上が収容できる規模まで想定しているという。建設費用はクラブ側が調達し、完成後は町に寄付して、公共施設としてクラブと共に運営・管理していくという。

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