未知の国でのELファイナルは成功だったか? アーセナルサポが語るバクー探訪記<1/2>
今週は久しぶりに欧州フットボールの話題をお届けすることにしたい。今季のCL(チャンピオンズリーグ)とEL(ヨーロッパリーグ)の決勝は、いずれもプレミア勢同士の対戦ということで話題になった。このうちリバプールとトッテナムによるCL決勝の会場は、マドリードのエスタディオ・メトロポリターノ。そしてアーセナルとチェルシーによるEL決勝は、バクーにあるオリンピック・スタジアムで開催された。
バクーは、旧ソ連を構成していたアゼルバイジャンの首都である。おそらくウズベキスタンは行ったことがあっても、アゼルバイジャンを訪れたことのある日本のサッカーファンは、それほど多くはないはずだ。私も東欧諸国は取材でかなり訪れているが、アゼルバイジャンは未踏の地のひとつ。ところがアーセナルのファンであれば、話は変わってくる。愛するガナーズがタイトルを獲得する瞬間に立ち会うべく、現地へと旅立っていったコアなファンは、私の交友範囲でも容易に見つけることができた。
今回、ご登場いただく木村康子さんは、20年来のアーセナルファンであり、現在発売中のfootballistaでもバクー観戦記を寄稿している(本業はライターだがサッカー専門というわけではない)。当然、記事には収まらなかったエピソードもたくさんあるわけで、当WMにて大いに語っていただいた。試合内容については「今さら」なので、ほとんど聞いていない。むしろ「ロンドン勢同士の対戦が遠くバクーで行われたこと」の是非こそが、今回のインタビューの肝となっている。(取材日:2019年6月7日@東京)
<目次>
*「欧州サッカーのイメージが広がった」
*選手が身近に感じられたハイベリー
*決勝の相手、チェルシーをどう見るか?
*現地で感じた「ムヒタリアンの不在」
*エジルを見に来たトルコ人のおじさん
*観光地としてのバクーは意外とお勧め
■「欧州サッカーのイメージが広がった」
──今日はよろしくお願いします。バクーから帰国されたのはいつでしたっけ?
木村 6月1日の夜ですね。深夜の便で帰国し、最終電車ぐらいで家に帰って、そのままCLを見ていました。
──相変わらずタフですね(笑)。EL決勝は、ガナーズファンの木村さんには残念に終わりましたけれど、それでも行ってよかったですか?
木村 それは絶対的に行ってよかったです。去年はEL準決勝のアトレチコ戦をマドリードで見ているんですけど、同じアウエーでもバクーは何もかもがぜんぜん違っていて、私の中でヨーロッパのサッカーのイメージがさらに広がる感じでしたね。
──バクーに行くことになって、ご家族は心配されませんでした?
木村 うちの夫もプレミアの大ファンでして、私がいろんなところに行くのをけしかける人なんですよ(笑)。彼はどちらかと言うと書斎派で、私はあちこち出て回るみたいな感じなんですけど、そんなわけでアーセナルの決勝が決まった時も「バクーなんて滅多にないから行ってくれば?」みたいな感じで(笑)。
──それまでのバクーというか、アゼルバイジャンのイメージって、どんな感じでした?
木村 正直、何もわからなかったですよね。わりと中央アジアみたいで、ちょっと言葉が悪いですけれども、あまり発展してないっていうか。その一方で天然資源に恵まれていて、それこそ「第二のドバイ」と言われるくらい急成長しているイメージもあって。どちらかというと後者のイメージが強かったんですが、行く前に下調べをしたら、今はエネルギーに依存するよりも観光のほうに力を入れる過渡期みたいですね。
──エネルギーから観光へというのも、ある意味でUAEやカタールに似ているところがありますね。もっともアゼルバイジャンだと、英語はあまり通じなかったと思いますが。
木村 ほぼ通じなかったです。現地では地元の若者が運営して貸し出している、アパートメントを借りて滞在していたんですけど、何人かいるスタッフの中で英語が通じる人は、本当にひとりかふたりぐらいで。
──去年、ワールドカップを開催したロシアも、ボランティア以外だとほとんど英語は通じなかったですね。そのかわり、スマートフォンにインストールした翻訳アプリが大活躍していましたが(笑)。
木村 それ、バクーでもポピュラーでした(笑)。ただし、簡単な英単語でも通じなかったのには、ちょっと面食らいましたね。店先で買い物に行った時に、シャンプーじゃなくてボディソープが欲しいと言いたかったんですが、「Not hair, body!」というレベルでも通じなくて(笑)。
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