宇都宮徹壱ウェブマガジン

吉本興業社長の謝罪会見が少しだけ羨ましく思える理由 完全なる「会見の可視化」はサッカー界でも実現するか?

 今週のコラムも、一見サッカーとは関係なさそうな話題からスタートさせることにしたい。週明け月曜の午後、吉本興業社長の謝罪会見がメディアとネットをジャックした。ちょうど取材先から帰宅してTVを点けたら、NHKを含む各局が社長の会見をライブ中継していて、SNSのタイムラインもこの話題で持ちきり。ずいぶんとひどい会見だなと思うと同時に、なぜ本件がこれほど注目されるのかもよく理解できなかった(お笑い芸人の反社会的勢力への「闇営業」が問題になった時、私が日本にいなかったせいもあるが)。

 今回の経緯はすべてを把握しきれていないし、謝罪会見のきっかけとなったお笑い芸人たちの会見も見ていないので、この件に関して多くを語ることは控える。むしろ私が関心を寄せていたのは、「会見」というシステムそのものについて。代表戦であれJリーグであれ、われわれサッカーを取材する人間は、毎週のように監督会見を取材している。ところが(業界も主旨も異なるとはいえ)「会見」そのものが庶民の注目を集める今回の事態を目の当たりにして、いささか奇妙な感情を抱かずにはいられなかった。

 私が本件で瞠目したのが、完全なる「会見の可視化」である。TVでの中継は1時間ほどだったが、ネットでは5時間以上ぶっ通しで流れていた。あの要領を得ない会見が、そんな長時間にわたって行われていたこと自体が驚きだが、その内容についてTwitterのタイムライン上でずっと流れていたのも不思議な光景であった。そして視聴者の批判の矛先は、社長のみならず質問している記者にも向けられ、「こいつ不勉強だな」とか「それ、ここで聞く?」といった辛辣な意見も少なくなかった。誰もがネットでアクセスでき、SNSで自由に発信できるようになった今、会見はある種の「エンターテイメント」となった感がある。

 実のところ「会見の可視化」というのは、サッカー界にとっても無縁な話ではない。いやむしろ、私がネットメディアで仕事をするようになってからの20年は、ずっと「会見の可視化」というものが、隠れたテーマであり続けたようにも思う。そしてそれは、2000年にオープンしたスポナビ(当初の名称はスポーツ・ナビゲーション)の歴史でもあった。もう19年も昔の話なので、ここであらためて振り返ってみるのも無駄ではあるまい。

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