【サッカー人気2位】今季初取材の今治に「J3らしさ」を見い…

宇都宮徹壱ウェブマガジン

強化の仕事は一般企業の「人事」に似ている? 西村卓朗(水戸ホーリーホック強化部長)<1/2>

 先週からラグビーワールドカップの取材で、サッカーの現場からご無沙汰しているが、もちろん日々のニュースやリーグ戦の動向はチェックしている。とりわけ今季のJ2の昇格争いは、例年以上の混戦模様だ。首位の柏レイソルが勝ち点66で図抜けているものの、2位のモンテディオ山形(勝ち点58)から6位の京都サンガF.C.(同55)まではわずか3ポイント差。このうち水戸ホーリーホックは57ポイントで4位に付けている(第33節終了時)。

 とりわけ最近の水戸は好調だ。9月に入ってからのリーグ戦4試合を3勝1敗とし、22日のFC岐阜戦に勝利したときは暫定で2位となった。その2日前の20日、クラブは西村卓朗強化部長のGM就任を発表(参照)。もともと純粋な意味での「強化」にとどまらない仕事をしていた人だけに、GM就任は当然の流れのように感じられる。それでも今後は、より広範囲な分野で、新GMが影響力を発揮するのは間違いないだろう。

 西村さんは1977年生まれの42歳。国士舘大学を卒業後、浦和レッズ、大宮アルディージャを経て、アメリカ独立リーグのポートランド・ティンバーズやクリスタル・パレス・ボルチモアでもプレー。その後、日本に戻って11年にコンサドーレ札幌で現役を引退している。ここまでの経歴を見てわかるように、水戸との接点はまったくない。いわば外様の立場から、16年に同クラブの強化部長に就任している。

 実は西村さんとは、隨分とユニークな場面で2度お会いしている。最初は09年、ポートランド・ティンバーズの一員として。次が14年、VONDS市原FCの監督兼GMとして。そうした興味深いキャリアが、型破りな強化方針の背景にあるのは間違いないし、それが最近の水戸の躍進を支えているという見立ても可能だろう。その見立てを検証するべく、水戸が浦和と対戦する天皇杯2回戦の取材前に、ご本人にじっくりお話を伺う機会を得た。

 水戸といえば佐藤拓也さんをはじめとする番記者の皆さんが日々情報発信しているし、西村さんに関しては現役時代から彼の動向を追っている川本梅花さんという書き手がいる。そうした人たちの仕事をリスペクトしつつ、私は私の視点から、水戸というクラブと西村卓朗という興味深い人物に迫ってみたいと思う。最後までお読みいただければ幸いである。(取材日:2019年8月14日@水戸)

(編集部註:肩書きは取材当時のものを掲載しております)

<目次>

*今季の水戸が「行けるのではないか」と予想した理由

*6つのポジションで60~70項目のプロファイリング

*一般の会社組織とサッカーのチーム作りに違いはない?

*アメリカでの挑戦から札幌で現役生活を終えるまで

*サッカー人生の中で最も重要だったVONDS市原時代

*悲願のJ1昇格に必要な「機運」づくりとタイミング

今季の水戸が「行けるのではないか」と予想した理由

──今日は西村さんの古巣である、浦和と天皇杯2回戦で顔を合わせるわけですけれど、感慨みたいなものはありますか?

西村 実はあまりないです(笑)。浦和を「対戦相手」として意識したのは、現役時代に大宮でプレーしていた時が最後でしょうね。ただ浦和というクラブには、本当に感謝しかないです。プロのキャリアをスタートさせてくれただけでなく、ほとんど出番がなかった僕に3年半もチャンスを与え続けてくれましたから。今回、天皇杯で対戦できることについては、特別な感慨というよりも、サッカー界のつながりの面白さというものが、またひとつできたという感じでしょうかね。

──なるほど。そして今季のリーグ戦ですが、開幕から12戦負けなしで、ここまでずっと一桁順位です。まだシーズンは終わっていませんけど、現段階でこの結果を当然と考えているのか、それとも意外と感じているのか、いかがでしょうか?

西村 シーズンを迎える前には「ある程度、行けるのではないか」という確信はありましたね。それは春先のキャンプでのチームの仕上がり具合と、他のチームの編成具合を分析した上での確信です。今季のJ2は、22チーム中11チームで監督が変わっているんですね。なおかつ、そのうちの6人がJ2を初めて経験する監督でした。そうした状況に加えて、長谷部(茂利)監督は就任2年目。今季は上手くチームが噛み合えば、良いところに行く可能性はあると感じておりました。

──西村さんが水戸の強化部長に就任したのが2016年で、今年で4年目。強化の仕事というのは、中期的な目標を見据えながら進めていく必要があると思うのですが、これまでの3年間を振り返っての手応えは感じていますか?

西村 順調に来ているんじゃないかという手応えは感じています。われわれのような小さいクラブの場合、選手を獲得したら「それで終わり」にしてはいけない。採用したからには、彼らがしっかり活躍するような環境づくりをしなければならないと思っています。その点については、現場とのコミュニケーションが非常に成熟してきたかなと。特に去年は監督が変わって、コーチングスタッフも大きく入れ替わりましたが、強化が考えている意図が現場にも色濃く伝わるようになったと感じます。

──逆に就任当初は、いろいろと難しかったですか?

西村 難しかったですね。右も左もわからず、知っている人もいない。そんな中で、水戸がJ2でどれくらいの立ち位置で、選手にどこまで求めていいのかという物差しがまったくなかったんですね。ですから、その時は自分のチームだけではなく、他のJ2やJ1の試合も見るようにして、今の水戸が戦力的にどれくらいの立ち位置なのか、どんな特徴を持っているのか、そういったことを見極めることに時間を要しました。

──監督が西ヶ谷(隆之)さんから長谷部さんに変わった3年目も、いろいろ大変だったと思いますが。

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