宇都宮徹壱ウェブマガジン

クラブ名を変えようとするオーナーは敵か味方か Jリーグがビジネス至上主義に傾くことへの危惧

 最初にお断りしておく。今週のコラムのタイトルは、私には珍しくあえて煽ってみた。まず「敵か味方か」。サッカーの原稿を書く時、私は「敵」というフレーズは極力使わないようにしている。対戦相手は(たとえダービー関係でも)断じて「敵」ではないからだ。そして「ビジネス至上主義」。多くの方が考えているように、私自身もJリーグの健全な営みにビジネスの観点は不可欠と考えている。つまり「敵」なんて言葉はできれば使いたくないし、「ビジネス」そのものを否定するつもりもまったくない。その点は最初に強調しておきたい。

 ではなぜ、こんな煽り気味のタイトルをつけたのか。それはサッカーファンやサポーターを自認する皆さんに、広く問いかけたかったからだ。私という書き手が、不安を煽って注目を浴びたがるタイプでないことは(少なくとも当WM会員の皆さんは)ご承知だと思う。タイトルから察しがつくとおり、本稿のきっかけとなったのはFC町田ゼルビアのクラブ名称変更問題。とはいえ、オーナーであるサイバーエージェントの藤田晋社長を糾弾するために、これを書いているのではない(多少の批判めいたことは書かせていだいたが)。

 本件については、藤田社長がクラブオーナーとなった1年前から当WMで言及しており、それらを整理してYahoo!個人ニュースにも書いている(参照)。ゆえに、その経緯についてここで繰り返すことはしない。本稿で私が訴えたいのは「そこから先」の話。どうも本件は、町田だけの特殊事例でもなければ、クラブ名のゼルビアを「なくす/なくさない」で済む話でもないように感じる。むしろ昨今の日本に定着しつつある「格差社会への肯定感」が、形を変えてJリーグにも浸透しつつあるように思えてならず、そのことが非常に気になっているのである。

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