宇都宮徹壱ウェブマガジン

平畠啓史が「ひらちゃん」であり続ける理由 新著『今日も、Jリーグ日和。』に寄せて<1/2>

 今週はJリーグファンなら誰もがご存じのお笑いタレント、平畠啓史さんにご登場いただく。零細個人メディアの当WMが、かようなビッグネームをゲストにお招きできるようになったことに、まずは密やかな感慨を覚えずにはいられない。今回のインタビューでは、このほど上梓された『今日も、Jリーグ日和。』への著者インタビューという体裁をとりつつ、普段あまり語られることのない平畠さんの本質に迫ってみたいと思う。

 高校時代までバリバリのプレーヤーで、その後もずっとサッカーファンだった平畠さんが、Jリーグの仕事を本格的にスタートさせたのは2007年のこと。今ではJリーグ関連メディアでこの人を見かけない日はないし、J2やJ3の地味なカードの会場でも「ひらちゃん目撃情報」はあとを絶たない。平畠さんはまさに「Jリーグのランドマーク」と呼ぶに相応しい存在である。

 私が興味を抱くのは、生き馬の目を抜くお笑いの世界にあって、平畠さんがずっとこのポジションをキープし続けている理由である。サッカー好きのお笑いタレントは、それなりの数で存在していると思うのだが、平畠さんの地位を脅かしそうな新鋭が現れる気配はない。その一方で、これほどサッカーファンの認知度が高いのに、アンチひらちゃんをほとんど見かけないのも不思議な話である。

 今回のインタビューでは、新著で存分に描かれている「ひらちゃんワールド」をとっかかりとして、平畠さんの息の長いサッカー界での活動について解き明かしていく。今回のインタビューが、いつも見慣れている「ひらちゃん」の新たな魅力を発見する一助となれば幸いである。(取材日:2019年9月19日@東京)

<目次>

*「Jリーグを見に行く時は何かが違う」という感覚

*なぜ『ディス・イズ・ザ・デイ』に共感するのか?

Jリーグにご無沙汰している方に読んでいただきたい

VARの導入は本当にサッカーのためになるのか?

*特定のユニは着ない。取材に行くときも黒系の服

*気になる次回作は「巡礼もののニューバージョン」?

Jリーグを見に行く時は何かが違う」という感覚

──このたびは新著の発売、おめでとうございます。タイトルが『今日も、Jリーグ日和。』ということですが、そのココロは?

平畠 タイトルなので、そんなにむちゃくちゃ大きい意味があるというわけでもないんです。ちょっと前書きにも書いていますけれども、Jリーグを見に行く時って、家を出た時に昨日と今日で何かが違うなっていう感じがするんですよ。この話をした時「実は僕もそうなんです」っていう方が意外といらしたんですね。そういう、サッカーがある日常の非日常、みたいなニュアンスを含んだ感じですかね。

──コラムの大部分はサッカーダイジェストで連載中の「アディショナルタイムに独り言」で発表したものですよね。連載が始まったのは何年前でしょうか?

平畠 7年を超えているようなので2012年からですね。当時のダイジェストは週刊で、確か隔週で書かせていただいていたように記憶しています。

──思い出した! 当時、私が連載していた「蹴球百景」とテレコだったんですよね。その後、ダイジェストは月2回の発行になるわけですが、平畠さんは7年にわたってずっと月2回のペースでコラムを書いてきたことになります。サッカーの世界はスピードが早いですが、7年前の原稿をあらためて読んでみて、いかがでしたか?

平畠 実は「もうちょっと恥ずかしいかな」って思っていたんですよね。でも実際には、自分で言うのも何ですけど「意外と読めるな」というのはありますね。それって「成長がない」という言い方もできますけど(苦笑)、面白がる部分というものは根本的に変わっていないのかもしれませんね。

──ダイジェストという専門誌での連載が決まった時、プレッシャーみたいなものは感じていましたか?

平畠 プレッシャーよりも喜びの方が大きかったですね。書く仕事は以前にもやっていて、2002年日韓ワールドカップの時に『フットボールウィークリー』っていうサイトでも月2回くらいコラムを書いていました。ですから、書く仕事には抵抗感はまったくなくて、どちらかと言えば好きだったんです。そんな中、ダイジェストさんで書かせていただくことが決まったときは、ものすごく光栄に感じました。

──月2回の連載って、あっという間に次の締め切りが来る感じだと思います。今までネタ探しで苦労されたことってあります?

平畠 ほとんどないですね。「あのネタとこのネタ、どっちで行こうかな」とか「この話は600字くらいだけど、あの話は1200字くらいいけるから、どうしようかな」とか。そういった悩みはありますね。いろいろ計算したりもしますけど、プロットみたいなものを書き出すことはしなくて、電車の中でぼーっと考えていたら浮かんでくる感じですかね。

(残り 3933文字/全文: 5907文字)

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