再現性の低いサッカーに未来はないのか?風間グランパスとポステコ・マリノスで分かれた明暗(J論)

宇都宮徹壱ウェブマガジン

ラグビーワールドカップのレガシーとは何か? 松瀬学(ノンフィクション作家)<1/2>

 11月2日の横浜での決勝戦をもって閉幕した、ラグビーワールドカップ日本大会2019。あれから10日あまりが経過し、私もすっかりサッカーの現場に気持ちを切り替えているわけだが、記憶が鮮明なうちに大会を総括しておきたい。今大会は普段、ラグビーにあまり縁がなかったサッカーファンにとっても、さまざまなインパクトを与える大会となった。かくいう私自身、今大会は17試合を取材することで、すっかりラグビーの面白さに目覚めたひとりである。

 今回、ゲストにお招きした松瀬学さんは、元ラガーマンである。早稲田大学卒業後、共同通信社に入社。ラグビーワールドカップは1987年の第1回大会からすべて取材している。2002年からフリーランスとなり、以後はノンフィクション作家として、ラグビーをはじめスポーツに関する数多くの著書を発表している。近著の『ノーサイドに乾杯! ラグビーのチカラを信じて』は、当WMでも紹介したばかりだ(参照)

 そんな松瀬さんには、実は大会前にスポナビにてインタビューさせていただいている(参照)。この中で松瀬さんは「簡単なことではない」としながらも、日本代表のベスト8進出の可能性を示唆していた。今回のインタビューの目的は、その答え合わせがひとつ。そして今大会が残したレガシーと、最近何かと話題になっているトップリーグのプロ化の是非についても、松瀬さんに語っていただいた。ワールドカップのレガシーとプロ化は、先行して経験したわれわれサッカーファンにとっても、極めて興味深いテーマであると確信するからだ。

 なお松瀬さんには、12月に開催を予定しているサッカーファン向けのトークイベントにも、メインゲストとして登壇していただく予定だ。素敵な特別ゲストもブッキングしてあるので、どうぞ楽しみにお待ちいただきたい。詳細については、間もなくWM会員先行でアナウンスさせていただく。(取材日:2019年10月28日@東京)

<目次>

*「ラグビー界には、川淵三郎さんがいないんですよ」

*日本でのワールドカップ開催はギャンブルだった

*台風による3試合中止の判断をどう評価するか?

*なぜアイルランドに勝てて南アフリカに敗れたのか

*企業スポーツだから可能だった「240日間の合宿」

*トップリーグのプロ化にJリーグは参考になるか?

「ラグビー界には、川淵三郎さんがいないんですよ」

──まずは松瀬さんの新著『ノーサイドに乾杯!』のお話から伺いたいと思います。奥付を見ると、ワールドカップ開幕日の「9月20日」となっていますが、実際はその1週間くらい前の発売だったそうですね。まだ大会の盛り上がりが、まったく感じられない時期での出版だったわけですが、結果的に絶妙のタイミングでした。

松瀬 個人的にはどうしても、ワールドカップの前に出したかったんですよね。なぜラグビーのワールドカップが、日本で開催されることになったのか。それを知っているのと知らないのとでは、試合を見たときの深みが違ってくると思うんですよ。残念ながらメディアの多くは、招致の経緯について大会前はほとんど触れていなかった。だから今大会の開催意義も、ほとんど知られていない。実はいろんな人たちの夢や熱意や想いがあったからこそ、この大会を呼ぶことができた。そのことを知ってもらいたかったんですよ。

──大会招致に関しては、私も当事者のひとりである徳増浩司さんにお話を伺いましたが(参照)、2002年のワールドカップと比べると、まだまだ広く知られてはいないですよね。その意味でも、本書の存在は貴重だと思います。それ以外にも、釜石で試合を開催する意義であったり、ワールドカップの歴史であったり、ノーサイドやリスペクトの精神であったり、ラグビーに関する基礎的な情報が散りばめられていて、ビギナーでも非常に手に取りやすい内容になっていると感じました。

松瀬 そういっていただけると嬉しいですね(笑)。僕がこの本で伝えたかったのは「ラグビーの価値とは何か」ということなんですよ。普段、サッカーを楽しんでいる人であれば「サッカーとは違った面白さがありますよ」ということを知ってほしかった。大会前にこの本を読んでいただければ、初めてラグビーを見る人でも、きっとワールドカップを楽しんでくれるだろう──。そんな想いで、この本を作りましたね。

──なるほど。私はこの本を、ベスト4が終わった段階で読ませていただいていますが、むしろ大会が終わってから読んでみると、いろんな意味での復習ができそうです。そろそろ本題に入りましょう。まず松瀬さんは、今大会をどのように評価しておられるでしょうか?

松瀬 日本がベスト8進出を果たしたとか、にわかファンが増えたとか、それらはもちろん評価すべきことだと思います。でも、そもそもこの大会を開催する目的を知らないと、きちんとした評価ができないわけですよ。実はラグビー界には「2020年構想」というものがあって、これは要するにワールドカップを開催することで、2020年にはラグビー人口を20万人に増やしましょう、ということなんですね。

──プラス20万人ということですか?

松瀬 いえいえ、今がだいたい10万人ですから、これを2倍にするということです。ラグビー人気があった頃は、それこそ20万人くらいの競技人口があったんですよ。それがどんどん落ちていって、今は10万くらい。それを最盛期の頃に戻して、さらにファンを100万人増やしましょうとか、そういうことを謳っているわけですね。ただし、残念ながらラグビー界には、川淵三郎さんがいないんですよ。

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