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サッカーファンは東京五輪をどう楽しむか問題 新国立で覚えた違和感と1964年の向田邦子

 年末から年始にかけてのNHKの特番では、何度となく新国立競技場が登場していた。今年2020年は、言うまでもなく東京五輪&パラリンピックの開催年。その象徴として、新国立をクローズアップするのは、もちろん理屈としては理解できる。とはいえ完成した新国立からは、どうにもスポーツの祭典を迎えるだけの、晴れがましいオーラが感じられない。それは元日の天皇杯決勝の取材で、新国立の記者席に座ったときに確信に変わった。旧国立と比べると「何か」が決定的に欠落していて、猛烈な違和感を覚えたのである。

 やがて、それが聖火台の不在であることに気づかされる。五輪のメイン会場として新設されたスタジアムなのだから、本来クローズアップされるべきは聖火台。それがないため、新国立を捉えたカメラアングルは、木製の屋根を見上げで強調したものが多い。これが、違和感の正体。ちなみに1カ月前のこちらの記事によれば、聖火台については《競技場のどこに置くかは依然として不明なまま》なのだそうだ。

 そういえば大会期間中、われわれサッカーファンがどのように大会を楽しめばよいのかについても、これまた「不明なまま」。大会期間中、J1からJ3までが中断となることは、すでに発表されている。となれば、男女の日本代表の応援に集中したいところだが、チケットをゲットするのは至難の業。友人の中には「平日の鹿島で申し込んだのにカスりもしなかった」と嘆いている人もいる。「東京」での五輪開催なのに、都民税を払っている人間には、恩恵らしい恩恵がまったく感じられないのが実情だ。

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