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本当にプロ化するの? トップリーグ 松瀬学✕島田佳代子<2/2>

本当にプロ化するの? トップリーグ  松瀬学✕島田佳代子<1/2>

Jリーグの「地域密着」はラグビーにも必要か?

──すごく基本的な質問で恐縮ですが、日本ラグビー協会とトップリーグって別組織ですよね。では、プロ化を主導しているのは?

松瀬 協会ですね。清宮さんが副会長ですから。もともと協会の中に「トップリーグは今のままでいいのか?」という議論がずっとあって、今回のラグビーワールドカップ開催を契機に「だったらダイナミックに変えてしまおう」というのが清宮さんの考え方。

──先ほど松瀬さんは、清宮さんを「川淵三郎タイプ」とおっしゃいましたが、実際に清宮さんはかなり川淵さんをリスペクトしていますよね。いろいろとJリーグ開幕の頃の話もリサーチしているようですが、当時のサッカー界の状況を今のラグビー界の状況に当てはめるのは、かなり強引なようにも感じられます。いかがでしょうか?

松瀬 ラグビー協会は当然、Jリーグの研究をやっていますよね。ただ、サッカーの世界もそうだと思いますが、協会とリーグの利害というものは対立することもあると思うんですよ。ですから清宮さんがどれだけ「プロ化」をアピールしても、リーグ側としては「マイナーチェンジでいいんじゃない?」と考えている人のほうが多いと思います。

島田 清宮さんは「2021年の秋からプロリーグを発足させる」と言っているんですけど、具体的なプロセスについては正式な発表がないんですよね。21年の秋なんて、あっという間にやって来るわけじゃないですか。そんなに急激に変えられるのかしら、という不安はありますよね。

──プロリーグの定義づけや選手の身分の問題もありますけど、やっぱりプロの興行ということであればハコの問題を考える必要がありますよね。川淵さんは「Jリーグのような地域密着型が望ましい」みたいなことを言っているようですが、それもまた簡単な話ではないように感じます。

島田 先ほどの図にもありましたが、今のトップリーグは北海道や東北のチームはないんですけど、普及のことも考えて試合は開催されているんですよ。ただ、そうなると純粋な意味でのホーム&アウェーではないですよね。東京の秩父宮での試合も多いので、地元でラグビーを見ることができる機会は、意外と少ないと思うんです。もし本当に地域密着を実現させるのであれば、スタジアムや練習グラウンドの問題を解決する必要があります。

松瀬 地域密着をマストにしたら、絶対に前に進まないですよ。試合はいろんな会場でやるというのでいいと思います。以前にも言いましたが、釜石がプロリーグに参戦するんだったら、メイン会場を仙台にして釜石では時々試合をするとかね。つまり「東北全体のチーム」という扱いです。

──プロ野球の東北楽天ゴールデンイーグルスみたいな位置づけですよね。本拠地は仙台だけれども、東北全体で盛り上げていこうみたいな。スタジアムについてはどうでしょう?

松瀬 僕はサッカーと兼用というのが現実的だと思います。現にジュビロ磐田のヤマハスタジアムでは、ヤマハ発動機の試合も行われていますからね。ヤマハがエコパを満杯にするのはさすがに厳しいでしょうけれど、ヤマハスタジアムならちょうどいい。もともとラグビーとサッカーは兄弟なんだし、同じスタジアムで共存することは十分に可能ですよ。芝の長さの違いは、それほど難しい問題ではないと思います。

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