【サッカー人気5位】【J激論】前田大然の”飛び立ち”と”マ…

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【無料公開】蹴球本序評『乾坤一擲 ザスパクサツ群馬社長・奈良知彦「人生最後の大勝負」』伊藤寿学著

 新型コロナウイルスの感染拡大が続き、いまだに再開のめどが見えないJリーグ。そんな中、3シーズンぶりにJ2に復帰したザスパクサツ群馬の激動の日々を描いた作品が届いた。著者は、群馬の番記者である伊藤寿学さん。本書は序章がないので、第1章から引用する。

 J3に陥落したクラブの後任社長探しは、予想どおり難航した。

 成績低迷、経営不振、信頼失墜……どん底に転がり落ちたJリーグチームの経営をだれが引き受けようか。導火線に火がついた爆弾処理。瀕死のクラブに支援を差し伸べる「ホワイトナイト(白馬の騎士)」は出現しなかった。

(中略)成績低迷、経営不振、信頼失墜の3点セット。周囲からは「ザスパはもうダメなのではないか」「どこかの企業に買ってもらうしかない」という声も聞こえてきた。このクラブはどうなってしまうのか。まさに惨状だった。

 そんなクラブの窮地を救ったのが、現社長の奈良知彦氏。ただしこの人は、IT企業経営者でもなければ、最先端スポーツビジネスの体現者でもない。前職は市立前橋高校の校長であり、かつては前橋商業高校のサッカー部監督として、高校選手権出場10回(ベスト4進出2回)を誇る名将として知られた人物。服部浩紀、鳥居塚伸人、笠原恵太など、その後Jリーガーとなった教え子も少なくない。

 実のところ、地元の「高校サッカーの名将」がクラブ経営に関わることについて、個人的には「禁じ手」だと考えている。地方のJクラブの成り立ちを取材していると、そういう話が全国至るところにあって、ほとんどのケースで上手くいっていないからだ。もともと経営者でないというハンディもあろう。だが、それ以前に「学校で頭を下げたことのない先生が、営業先で頭を下げられますか?」という意見にも、一定以上の説得力が感じられる。

 それではなぜ、教育者出身の奈良社長は、クラブの経営と成績の立て直しに成功したのか? それは本書を読んでからのお楽しみであるが、もうひとつ注目点を挙げるならば、本書は新型コロナについて言及した(おそらく)最初のサッカー本であることだ。コロナ禍によるJクラブの経営危機が、あちこちで囁かれるようになった今、本書には新たな役割が付託されたようにも感じる。定価1400円+税。

【引き続き読みたい度】☆☆☆★★

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