宇都宮徹壱ウェブマガジン

【無料再掲】「いろんな色のユニフォームを着た人たちが楽しめるお店にしたい」ふくやん(KITEN!店長)インタビュー<1/2>

目指すは「J2党が好きな人たちが来てくれるようなお店」

──そろそろKITEN!の話題に移りたいと思います。このお店に来て、まず驚かされるのがさまざまなクラブのポスターが貼られていること。しかもJ1J2だけじゃなくて、JFLとか地域リーグとかなでしこのポスターもあるじゃないですか。まさにアンダーカテゴリーのファンにとっては聖地ですよね。

ふくやん 毎年、いろんなサポの方がここにポスターを持ってきてくれるんですよ。今、貼られているのは2017シーズンの最新版のものばかりです。

──このお店は、もともとヴェルディのファンのためのお店だったそうですね。

ふくやん そうですね、『カフェ・ド・クラッキ』というお店でした。立川からヴェルディを盛り上げようということで、05年に開店したそうです。最初は、ここよりももっと駅に近いビルの2階にあって、それからここの場所に移転してきたらしいです。

──ふくやんさんがこのお店を引き継ぐきっかけは?

ふくやん 実は僕、ここの店を始めるまで渋谷にある上場企業でエンジニアをやっていたんです。それでも「いつかスポーツバーをやりたいな」と思って、A4サイズの紙に店のイメージを絵に描いていたんですね。それをSNSにアップロードしていたら、14年にクラッキの店長だった人から「お店を畳むんだけど、引き継がない?」というお話をいただいたんですよね。

──ここを使ってお店やっていいよって、いきなり言われたんですか?

ふくやん そうなんです。ここの建物の契約を1年分残してカフェ・ド・クラッキを閉めるということで、契約更新は1年後だったんですけど、それでも新しく開店するにはお金もかかりますから、ちょっと迷いました。ちょうど結婚して1年くらいで、そんなにお金もない時期だったし。

──それは迷いますよね。それからどうなりました?

ふくやん クラッキの店長が言うには「場所はあるし、冷蔵庫も食洗機もお皿もコップも全部譲る。やるかやらないかは自由だけど」って言われて。たぶんこのチャンスを逃したら、こういう話は二度と巡ってこない。そう思って、まずは奥さんに話しました。奥さんからは「早すぎるんじゃない?」って言われたんですけど、とりあえず次の契約更新まで1年はやらせてほしいって説得しました。

──それが、おいくつの時ですか?

ふくやん 奥さんを説得したのは13年なので、29歳の時ですね。

──奥さんの理解もさることながら、けっこう勇気ある決断だったと思います。そもそもここはヴェルディのお店で、言ってみれば色が付いていたわけじゃないですか。幅広くサッカーファンにアピールできる勝算みたいなものはあったんでしょうか?

ふくやん それもやっぱり、J2党の存在が大きかったですね。J2党って、いろんな色のユニフォームを着た人たちが集まってくるじゃないですか。この人たちをターゲットにして、誰が来ても楽しめるようなお店にしたい。特定のクラブのファンが集まるお店はいっぱいあるけれど、あえてターゲットを絞る必要はないんじゃないか。J2党が好きな人たちが来てくれるようなお店にすれば、きっと上手くいくと思うようになりました。ですから、最終的に僕の背中を押してくれたのって、実はJ2党だったんですよね。

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