宇都宮徹壱ウェブマガジン

代表戦はTV観戦? Jリーグ取材は番記者優先? 「ウィズ・コロナ」時代での現場仕事を想像する

 全国に発令されていた、政府による緊急事態宣言のうち、39県が先週解除された。各地でJクラブの練習再開のニュースが届くようになり、わずかずつであるが社会が「平常」に戻りつつあることを実感する。ずっと自宅に籠もっていた、ディフェンシブな暮らしはそろそろ終了。今後は「ポスト・コロナ」ではなく「ウィズ・コロナ」の時代における、新しい生活様式や社会常識に順応していく必要がある。

 幸いにして「ステイホーム」の生活については、それほど深刻なダメージを被ることはなかった。確かに、旅とフットボールのない日々に、寂しさやストレスを感じることはあった。それでも自宅に籠もって執筆というのは、われわれの仕事ではよくあること。孤独への耐性はそれなりにある。カミさんがオンライン勤務でずっと自宅にいた時も、お互い干渉しすぎない距離感を保つことができていた。加えてわが家は、子供もいなければ介護すべき親もいない。むしろ申し訳ないと思うほど、のほほんとした暮らしぶりであった。

 そんな中、個人的に「ウィズ・コロナ」の時代を強く感じたのが、今週から始まる大学の講義の準備作業。周知のとおり各大学は感染防止のため、今年度の講義はオンライン講義に切り替えている。私も1カ月後ろ倒しになった第1回の講義に向けて、自作のパワーポイントにナレーションを入れて編集し、1本の動画コンテンツにしてYouTubeにアップする作業に追われた。確かに大変ではあったが、ずっとオンライン講義をキャンパスの外で受ける学生のほうが、もっと大変なのは言うまでもない。

 新緑溢れるキャンパス、新歓やサークルの勧誘、そして新入生の晴れがましい笑顔。この時期の大学は、本来ならば一年で最もキラキラしている。それなのに今年の1年生は、キャンパスデビューもできないまま、自宅でじっとデバイスを見つめながら講義を受けているのである。当然、Wi-Fi環境が万全でない家庭もあるだろうし、すべての学生がPCを持っているわけではない。見る見る熱を帯びてくる、スマートフォンの小さな画面を凝視している学生もいるはずだ。そう考えると、何とも居たたまれない気分になる。

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