宇都宮徹壱ウェブマガジン

「今治の人に今治のものを食べてもらう」 苦難のときの「Jと食」を考える<今治篇>

「今は少ないパイを奪い合うのではなく」 苦難のときの「Jと食」を考える<松本篇>

他サポとの絆に支えられた『二宮かまぼこ店』

 松本と同じく、これまで何度も取材に訪れていたのが、愛媛県の今治である。初めて訪れたのは、四国リーグ時代の2015年。夜の8時で漆黒の闇に包まれる駅前と、シャッターが閉まったままの店が並ぶ商店街を見て、最初は「本当にここでJクラブが誕生するのだろうか」という強い疑念を抱いたものである。しかし翌16年に地域CLで優勝。そして昨年は3年かけてJFLを突破し、今年は夢にまで見たJ3開幕を迎えるはずであった。

 そんなクラブを地域リーグ時代から応援してきた二宮亜衣子さんは、大正14年(1925年)から続く『二宮かまぼこ店』の看板娘としても知られる。かまぼこはタオルと並ぶ今治の特産品であり、お店にはJFLのアウェーサポが立ち寄ることでも有名。食事を出すお店ほどではないにせよ、今般のコロナ禍によるJリーグ中断によって、それなりに影響は受けているのではないか。そんなわけで、ZOOMを通して久々に二宮さんとおしゃべりした。

 ウチは飲食店ではないので、それほど売上的に深刻というわけではないですね。ただし、お店で普段づかいのかまぼこを販売するほかに、市内のスーパーやサービスエリア、あとはタオル美術館や学校給食センターにも卸しています。観光客が集まるところは休業していますし、学校もしばらくお休みでしたから、そこでの売上がゼロの状態は続いていました。ただ、こちらの学校は昨日(5月12日)から再開していて、ランドセルを背負った子供たちの姿を見た時にはじんわりきましたね。

 かまぼこは生ものなので、賞味期限がせいぜい1週間なんですよ。加えて、最低限作っておかないといけない量があって、どうしても余ってしまう。本来なら通販を考えるべきなんでしょうけど、ウチにはウェブに強い人がいないんですよね(苦笑)。ですので、関東や関西に暮らしている、お世話になった人たちに送らせていただきました。そんな中、夢スタに来てくれたことのあるアウェーサポの方から、お電話で注文いただいた時はうれしかったですね。「試合が始まったら、また夢スタで会いましょう!」って、約束しました。

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