【サッカー人気2位】今季初取材の今治に「J3らしさ」を見い…

宇都宮徹壱ウェブマガジン

M&AのプロフェッショナルがJクラブを求める理由 稲吉正樹(NOVAホールディングス社長)<1/2>

 6月8日に発売される『フットボール批評issue28。コロナ禍の中での取材と執筆ということで、今号はこれまでとは違った意味で感慨深い号となる。私は「Jリーグのプロトコルの作り方 藤村昇司(Jリーグ社会連携本部長・特命担当部長)黒田卓志(Jリーグフットボール本部長)」、そして「NOVAホールディングスが抱く野望のいわてグルージャ盛岡の本気度を問う」の2本を寄稿している。

 このうち後者を執筆するべく、4月15日にインタビュー取材させていただいたのが、NOVAホールディングスの稲吉正樹社長。英会話教室で知られるNOVAは、昨年10月25日、いわてグルージャ盛岡の株式取得を発表してJリーグファンを驚かせた。同社は3年前にも、当時経営危機にあったV・ファーレン長崎の経営権取得に名乗りをあげている。NOVAを率いる稲吉さんは1968年生まれの52歳。そのキャリアについて、フットボール批評の原稿から引用すると、以下のようになる。

 大学卒業後、地元である愛知県蒲郡市の職員を3年で辞し、学習塾や居酒屋のフランチャイズビジネスで成功。07年には、NOVAの経営破綻を受け、同社の事業を引き継いで半年での黒字化に成功する。その後のリーマンショックにより、一時的に事業を手放したものの、すぐに買い戻して社名を現在のNOVAホールディングスとしたのが13年。V・ファーレン長崎のホワイトナイツに名乗りを挙げたのは、4年後の17年のことだ。

 周知のとおり、長崎の経営権はジャパネットホールディングスが取得することとなった。そこできれいに身を引いたNOVAが、2年後に岩手のJ3クラブを傘下に収めるに至ったのはなぜか? その理由を探るのが今回のインタビュー取材の狙いだったが、グルージャの話がメインであるため、長崎の話は必要最小限までカットせざるを得なかった。あまりにももったいないと思い、批評編集部と交渉した結果、稲吉さんのインタビューを独立させて当WMに掲載することとなった次第である。

 M&Aに関しては「おそらく国内で一番多い数をやってきた」と語る稲吉さん。そのほとんどは、企業再生案件だったという。そんなプロフェッショナルから見て、地方のJクラブの経営はどのように映るのだろうか。そしてJクラブをグループに迎え入れる狙いとは何か。本稿はグルージャや長崎のファンのみならず、すべてのJクラブファンに読んでいただきたい内容となっている。(取材日:2020年4月15日@東京)

<目次>

*「そもそもJクラブで、お金儲けできるはずがない」

*「ジャパネットさんに決まりました」「そうですか」

*「スポーツ系事業とのシナジーは常に意識していた」

*「むしろ悩みましたね。バスケもやっていましたし」

*「プロのスポーツチームにとって最大かつ唯一の商品」

*「人件費は前年の3倍くらいの予算をかけました」

「そもそもJクラブで、お金儲けできるはずがない」

──今日はよろしくお願いします。いわてグルージャ盛岡の経営権取得のお話を伺う前に、3年前にV・ファーレン長崎へのアプローチについてお話いただきたいと思います。もともと稲吉さんには「Jクラブを持ちたい」という思いというものがあったのでしょうか?

稲吉 最初からそういった思いはありませんでした。たまたまニュースで、V・ファーレン長崎さんが経営的に苦しいことを知って、それなら手を挙げてみようかと。そういう選択肢もあるのかな、という感じでしたね。

──V・ファーレン長崎で対応したのは、当時会長だった荒木健治さんという方だったと思います。稲吉さんと荒木さん、どちらから接触があったのでしょうか?

稲吉 まずニュースを見て、私のほうからクラブに電話したんです。「何かお役に立てることはありませんか」と。それからお会いする機会をいただいて。

──長崎まで会いに行ったんですか?

稲吉 最初はこちらから会いに行きましたね。とにかく、お困りだったみたいなので。ただ、荒木さんとはトータルで2~3回くらいしかお会いしていなかったと思います。

──「長崎の経営が厳しい」という報道があったのは、2月上旬だったと思うんです。それでNOVAさんが「5億円出資します」と発表したのが3月7日でした。荒木会長とお会いして、出資を決意するまでには、どれくらいの時間があったのでしょうか?

稲吉 長崎で荒木さんにお会いしたのは、3月の初旬くらいですかね。それから2~3日だったか、4~5日だったか。とにかく1週間以内で出資を決めたと記憶しています。

──5億円というお金は、地方のJクラブからすると非常に重みがありますが、NOVAさんにとっては決断しやすい金額だったんでしょうか?

稲吉 どうでしょうかね(苦笑)。株式の取得費用と1年間の運営費用の予算を見て、導き出された金額が5億ということでした。運営費用というのは、僕らの業界でいうと連結グループ会社への支援になります。個別で見ると大きな金額かもしれないですけど、事業運営という点でいえば必要な費用だと思いました。

──あとでグルージャの話でも出てくると思うんですが、Jクラブの経営というものは投資に対して、そんなに大きな実利があるわけではありません。むしろリターンは少ないし、試合に勝てなくてお客さんがなかなか集まらないとか、J2だったら降格するとか、そういったリスクもあるわけです。そのあたりについての不安はなかったんでしょうか?

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