宇都宮徹壱ウェブマガジン

Jリーグ再開後の「ニューノーマル」を心配しない理由 過去の歴史が教えてくれる、日本人のハンパない適応力

 緊急事態宣言が全国に発令され、多くの国民が巣篭もり生活を続けていた先月、NetflixHuluのコンテンツにハマった方も少なくなかったはずだ。私自身、コロナ一色のTVに食傷気味だったので、執筆の合間に古いドラマを観ながら気分転換をしていた。そんな作品のひとつが、今もカルト的な人気を誇る『傷だらけの天使』である。萩原健一と水谷豊、そして岸田今日子や岸田森といった名優や怪優が揃い踏み。脚本は市川森一や鎌田敏夫、監督には深作欣二や恩地日出夫といった、錚々たる名前が並ぶ。

 放映されたのは1974年から75年。今から45年前のこのドラマを、何の予備知識のない平成生まれが見たら、かなり面食らうことだろう。暴力と性描写のシーンが生々しく、ハラスメントやジェンダーへの配慮も皆無。やたらと喫煙シーンやおっぱいが出てくる。たまに「つまらん番組を垂れ流すよりも昔のドラマを再放送すればいい」という意見をSNSで見かけるが、オサム(萩原)とアキラ(水谷)が相手の飛沫を浴びながら怒鳴り合うシーンは、この「コロナの時代」においては放送禁止ものである。

 確かに「コロナ以前/以後」で、世界の常識や規範は短期間で激変した。今後さらに起こり得る変化についても、多くの人たちが漠然と不安を抱いていることだろう。とはいえ、今般のコロナ禍ほどでなくても、平成時代の30年間は変化の連続であったことは留意すべきである。たとえば「震災以前/以後」。たとえば「スマホ以前/以後」。あるいは「Jリーグ以前/以後」でもいい。気がつけばわれわれは、さほどの覚悟を要することなく、新しい常識や規範を身に着けて今を生きている。

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