宇都宮徹壱ウェブマガジン

プロ野球開幕で顕在化? Jサポの「隣組」感を考える 再び護送船団方式に舵を切ったJリーグへの複雑な思い

 このところ「無人スタジアム探訪」と称して、中断期間で試合が行われていない首都圏のスタジアムを訪ね歩いて撮影している(その目的については、OWL Magazineでの記事をご覧いただきたい)。本稿では、先週の火曜日に日産スタジアムで出会った、横浜F・マリノスのサポーターの話から始めることにする。その人は30代くらいの男性で、スタジアムの駐車場近くでトランペットの練習をしていた。曲目は『コーヒールンバ』。F・マリノスが勝利した時に流れる、お馴染みのメロディである。

 彼とのやりとりについては、REAL SPORTSで記事を書いたので割愛する。私は自分の名刺を渡した上で、「ここで聞いた話を記事にしていいですか?」と尋ねてみた。すると、くだんのマリサポは「いいですけど……」と少し言い淀んでから、こう続ける。「ちゃんとクラブに確認してもらえます? 絶対に迷惑はかけたくないので」──。翌日、F・マリノスの広報に事の経緯をメールでお伝えしたところ、「ウチはぜんぜん問題ないです」との回答をいただく。これで一件落着となったわけだが、一方でかすかなもやもや感が残った。

 それから3日後の金曜日、Jリーグ再開に先んじてプロ野球が開幕。東京ドームで行われた巨人戦では、無観客試合にもかかわらず150人以上のファンが「中で応援したい」と駆けつけたことが報じられた(記事は削除されているが、こちらを見れば察しはつくだろう)。SNS上では、普段あまり野球に言及しないサッカー系のアカウントが、この件に関して一様に「けしからん!」と反応していたのが興味深い。そこに私は、あのマリサポの一件で感じていた、もやもや感の「正体」を見る思いがした。

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