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宇都宮徹壱ウェブマガジン

感染症と顧客体験のプロフェッショナルが考えるJリーグ観戦の未来 岩田健太郎(神戸大)✕森松誠二(デロイト トーマツ)<1/2>

 6月19日のプロ野球開幕に続き、27日にはいよいよJ2が再開し、J3も開幕を迎える。今月の当WMでは一連の流れに即して、ウィズ·コロナやポスト·コロナ時代のJリーグ観戦のあり方について、さまざまな識者を迎えながらの考察を試みてきた。その総仕上げとなる今週のテーマは、コロナ禍以降の「Jリーグ観戦の未来」。ゲストは、神戸大学医学研究科感染症内科教授の岩田健太郎さん、そしてデロイト トーマツ コンサルティング合同会社 シニアマネジャーの森松誠二さんである。

 岩田さんは今年2月、横浜港に停泊していたダイヤモンド·プリンセス号に乗船して、その内情を告発したことで話題になった。またヴィッセル神戸のファンとしても知られ、最近はサッカーメディアで登場する機会も増えている。一方の森松さんは、スポーツビジネスでも注目を集めているCXCustomer Experience=顧客体験)のエキスパート。今年2月には、FC今治の岡田武史さんを招いてのSAJ(スポーツアナリティクスジャパン)でのトークイベントでもご一緒させていただいた(参照)

 感染症とCX。まったく異なる専門分野のプロフェッショナルをお招きし、その知恵と見地と経験をかけ合わせることで、これからのJリーグ観戦環境がどのようなものになるのかを予想する。それが、今回の対談企画の目的である。そのきっかけとなったのが、岩田さんの新著『新型コロナウイルスとの戦い方はサッカーが教えてくれる』(エクスナレッジ)。本書の内容をさらに膨らませるべく、その対談相手として森松さんにお声がけしたところ、快く応じていただいたことで、夢の対談が実現した。

 もうひとつ、今回のブッキングで不可欠となったのが、ZOOMというリモートツールである。今回のコロナ禍がなければ、神戸の岩田さんと東京の森松さんに共演していただくというアイデアは、おそらく生まれなかったように感じる。こんな時代だからこそ実現した、今回の豪華なセッション。Jリーグ再開を心待ちにする皆さんに、満を持してお届けすることにしたい。(収録日:2020年6月4日)

<1/2>目次

*リーズナブルなリスクと受け入れられないリスク

*ワクチンには「過度の期待はしないほうがいい」

*「投げ銭」はサッカーの試合に向いているのか?

リーズナブルなリスクと受け入れられないリスク

──Jリーグの再開日程が発表されました。まずは、いちファンとしての視点から、それぞれ感想をいただきたいと思います。デロイト トーマツの森松さん、いかがでしょうか?

森松 ファンやサポーターの心理からしてみると、さすがにそろそろ限界なのかなというのはありましたね。中断期間中、各クラブがさまざまな取り組みの発信をしていましたけど、一通りやり尽くした感がありましたよね。われわれとしても見尽くしたという感じで、そろそろ本物の試合を楽しみたいという気持ちは間違いなくありました。そうした中、政府見解の発表を待ちながら、慎重にいろいろと準備を積み重ねた上で再開を発表したJリーグには、ファンのひとりとして有り難く思いますね。

──岩田先生は、ヴィッセル神戸のファンでもあるわけですが、やはりシーズンが再開されるのを心待ちにしている感じでしょうか?

岩田 もちろんです。また試合が見られることは、ファンとして嬉しいに決まっているわけですが、一方でヴィッセルからは選手とスタッフに感染者が出てしまいました。そのことによる風評被害もあってか、僕が参加しているヴィッセルのサッカースクールも開催できない状況が続いているんです。そういう部分でのジレンマに耐えながらも、少しずつ出口戦略を探りながら、再開の日を待ち続けているという感じですね。

──なるほど、ありがとうございます。ということで、今日は感染症がご専門の岩田先生、そしてCXのエキスパートである森松さんのおふたりに、専門性とファン目線の両方からお話を伺いたいと思います。今度は岩田先生からお聞きします。今回のJリーグ再開について、村井満チェアマンは明言しませんでしたが、ゼロリスクはあり得ないというのが大前提だったという見方で間違いないでしょうか?

岩田 もちろんです。観客についてもそうですが、無観客の場合でも選手やスタッフへの感染のリスクはゼロではありません。日本という国から、コロナウイルスが排除されたわけではありませんので。幸い今は、全国のほとんどの地域でウイルスは見つかっていない状況ですが、ぽつりぽつりと感染者が出てきています。その背後には、もっと多くの見つかっていない感染者がいると考えるのが自然でしょう。

 人間が外に出て活動すると当然、感染リスクを増やしていることになります。感染リスクを完全にヘッジしようと思ったら、それはもう家にいるほかないという話になりますよね。ところが、その選択肢を採ってしまうと、経済活動の停止という別のリスクが生じてしまいます。ですから、リスクは受け入れるんだけど、あくまでもリーズナブルなリスク。逆に、受け入れられないリスクは、採らないということですね。

──サッカーにおけるリスクヘッジと同じ考え方ですね。

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